寮生はプリンセスがお好き5章_2

ホラー再びっ

「う…わぁ……ルーク、離れないでね」
と、半泣きで自寮の寮長にしがみつくフェリ。

「もちろん。怖かったら目をつむってると良いよ。
足元が悪そうな場所があったらちゃんと抱き上げて運ぶから」
と、抱きつかれた銀竜寮の寮長ルークは、震える自寮のプリンセスの白い額にチュッとキスを落とす。
  
(すげえなぁ…本当にか弱く見える…)
裏の顔を知っているだけに、そんなか弱さ満載のプリンセスを演じているフェリを見て感心するギルベルトの横では

「やっぱり守ってあげたいタイプってフェリみたいな人間の事を言うんだな」
と、自身も少し不安なのか、そっとギルベルトのシャツを掴みながらアーサーが言う。

「ん~俺様はお姫さんの方がずっと守ってやりたいって思えるけどな」
と言ったのは嘘ではない。

フェリシアーノの本性だとか、アーサーが自寮のプリンセスだとかそういう事情を置いておいても、フェリシアーノのように堂々と怖いから守ってと言える子よりも、怖いだろうにそう言えず、震える手でそっとシャツの裾を掴むのが精いっぱいというタイプの方がギルベルト的には守ってやりたいと言う気になる。


前回のイベントから早2カ月。

学園はすっかり夏の様相を呈していた。
広大な敷地のほとんどが森と言う事もあり、蝉がミンミンと煩く鳴き、暑さをより一層感じさせる。

そんな中で各寮長と副寮長の交流会をしようと言いだしたのは、3年の金虎寮の寮長カインだった。

代々政治家の一族で、自身も大物政治家の親を持つ彼は、世界中に新しいものから古いものまで数多くの別荘を持っているらしく、この時期に

「暑いし、きもだめしがてらうちの古城にでも泊まるか~」
と言いだすのは、同じく3年の銀虎寮の寮長ユーシスいわく毎年の事らしい。

泊まる城も誘うメンツも毎年違うらしいが、同学年で互いに優秀なためカインとはライバルであり親友だったという彼は、必ずそのメンツの中に含まれていたのだと言う。

『肝試しって言っても別に何やるわけじゃなくてな、単に薄気味悪い雰囲気がある古城に泊まるだけ。
まあ…年によっては夜に集まって怪談したりするけどな。
あとは基本的には自炊なのが面倒だな。
料理出来ない奴ばっか集まって、ほぼ1人で全員分の飯作らされた事あるし…』
と、苦笑交じりに語る。


一応3年の寮長2人が主催となっているこのイベント。

学校側から許可を取ったため、これも寮のポイントに含まれるとなれば、12年の各寮長も巻き込まれるしかない。


こうして7月半ば。

無事期末試験も終わり、終業式までは試験返却日に1日登校するだけであとは休みの1週間の中の連休に、カインの実家が寄越した迎えに寄越した自家用機で場所もわからないその古城へと、全員連行されて行ったのだった。






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