寮生はプリンセスがお好き4章_23

自寮に戻ると、銀竜寮と違ってこちらはちゃんと玄関から廊下を通って自室へ。


――ただいま~

と、ドアを開け、そのままリビングに入ると、ソファにクマをぎゅっと抱きしめたお姫さんと少し困った顔のルートが待っていた。

どう見ても寝ていないのが丸わかりな様子で、ふらふらと
「おかえり~。ギル」
と、駆け寄ってくる。

半分眠っているような雰囲気で、いつもよりなんというか緊張感がない…ふわふわと屈託がない笑顔。
それが幼げですごく可愛い。

「ただいま、お姫さん。
どうした?眠ってなかったのか?」

いったん抱きついてくる小さな身体を抱きしめ返して、それからギルベルトはひょいっとギルベルトのプリンセスを横抱きに抱きあげる。

普段だとわたわた動揺するところだが、今は本当に寝ぼけ眼なのだろう。
アーサーは抵抗もせず、まだ細い腕をぎゅうっとギルベルトの首に回した。

ああ…もう可愛い、何度も言うが可愛い。
思わず緩む頬。

「すまない。どうしても兄さんを待つと言って寝てくれなかったんだ」
と、本当に申し訳なさそうに頭を下げるルートの言葉に、ギルベルトは視線をアーサーに向けた。

するとアーサーはこてん…と小首をかしげてギルベルトを見あげ、いくぶん真剣な顔で主張する。

「…だって…ギルは俺の寮長だから。
俺は副寮長だし、ちゃんとギルの帰りを待っておかえりを言わないとだろ」

………
………
………
可愛すぎて不覚にも倒れそうになった。

俺の寮長…俺の寮長…俺の寮長……

その言葉がくるくると脳内でリピートされる。

「あの…兄さん。
兄さんが帰って来たなら俺は戻って良いだろうか?」
「あ、悪い。ごめんな、ルッツ。ダンケ。もう戻って良いぞ」

自分だけ眠るわけにも行かずに一緒に起きていたのであろうルートの存在もすっかり忘れていた。

とりあえず礼を言って部屋に戻らせ、ギルベルトが
「んじゃ、俺様達も寝るか」
と、腕の中に視線を落とすと、愛しいプリンセスは安心しきったようにすやすやとお休み中だ。

(…これ…本当に俺様を殺しに来てるんじゃね?)

前寮長の菊がよく言っていた。
人間、可愛すぎるものを見るときゅん死にするのだそうだ。

まさにそれ、まさにそれである。

熟睡中のお姫様を一旦ベッドに寝かせて寝間着に着がえ、自分もベッドにもぐりこみ、意識が落ちるまでの数分間…フェリシアーノにはやめてあげてと言われたが、明日…いや、明日とは言わず今日からでも学園の中心で愛を叫び学園中に愛を知らしめなければ…と決意した。

そう、お姫さんは確かに恥ずかしがるかもしれないが、大方はギルベルト自身に対して恥ずかしい奴と思うだけでお姫さんには同情の視線を送ってくれるだろう。

お姫さん本人に危険を悟らせて不安を抱かせる事無く、楽しく幸せな学生生活をすごさせてやる…心身ともに健やかな学園生活を…そのためなら自分が残念な男と思われるくらいどうと言う事はないではないか。

使命感に燃えやすい男、現代を生きる騎士、ギルベルト・バイルシュミット。

それが守るべきと思う相手と出会ってしまった事で一部から“残念なイケメン”と呼ばれるようにもなるが、本人的には全くもって問題はなく、さらに学生生活が幸せになっていくのであった。




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