「ああ?」
「今回のターゲットはアルフレッド…だったのかなって」
「…根拠は?」
「兄ちゃんも覚えてるでしょ?金系の副寮長の部屋にだけ塩気の多い食べ物があって飲み物がなかったって」
「あーそれか」
「理由…わかった?」
「ん。たった今な」
「ふふっ。本当に話が早いね。
そう、たぶんね、普通にプリンセスやってたらこんな時間にポテトチップスなんてジャンクフードを食べようと思わないから、あれは外部生でプリンセスの自覚もないアルフレッド用でしょ。
で…広間での乾杯も同じく。
寮長にしても副寮長にしても、たくさん飲まないともったいないとか思うような育ち方してる人いないからさ、ジュース飲んでる暇あったら情報交換でしょ。
乾杯のジュースを飲みほして何度もグラス空にするなんて、喉が渇いてる彼くらいだし…」
「はからずも…うちのお姫さんが奴の命救ったってことだな」
「うん。毒はピッチャーのジュースに浮かんだ氷の中だね。
最初みんなに注いだ時には氷の中心部にある毒は閉じ込められたまま。
だから飲んでも問題ない。
でも時間がたったら中央に毒を仕込んだ氷がとけて毒入りジュースの出来上がり。
2回目の乾杯のタイミングでジュースを注ぎ直すのはたぶん彼だけ。
でもって…他にバトラーと卒業生、2人死んでたら、“実はアルフレッドを殺したかった”って言うのもわからないしね。
ターゲットがわからないってことは、暗殺を企んだ相手も特定しにくいし。
たまたま起こった無差別殺人でたまたま犠牲者になったって思わせるつもりだったんだろうね。
まあ…その“たまたま”って言うのが使えなくなっちゃったから、今後警戒されないためにもイベントでしたって事にしちゃったんだろうけど…。
さすがに有力者の子息揃いの寮長全員殺害したらごまかしきかないし特定されちゃうから、巻き込む相手もそういう意味では消えても揉み消せる一般人の元プリンセスにしたんだろうね」
「ちょっと待てっ!!」
ひどく不安になるような聞き捨てならない事を聞いた気がした。
「ちょっと待ってくれ…つまり…フェリちゃんの予想だと相手は一般家庭の人間なら巻き込んでも良いと思っているって事…か」
「うん。そうだと思う。
だから俺んとこ来たんじゃないの?」
「…正直そこまでピンポイントで危険だとは考えてなかった…。
単に今回の巻き込まれくらいの感じだと……」
「…結局さ…有力者の家の人間としての危機管理に関してはギルベルト兄ちゃんは他と比べてもあり得ないくらい出来てるんだけどさ、やっぱり有力な家の人だから、そうじゃない方向性の危機察知能力が少しないよね。
有力者の子息が多数の中で後ろ盾がないって事はそう言う事なんだよ。
今回犠牲者に選ばれたプリンセスだってさ、普通の家の人だから行方不明になったところでそこまで大騒ぎはされないで揉み消せるし、家族があまりに騒ぐようなら家族ごとね…消されちゃって終わりだと思う」
「…………」
「だから…ね?
俺なら色々見えるし相談にも乗れるし協力も出来るよ?
アーサーとだってもう仲良くなれたからくっついててもストレスや不安与えないし」
正直…ギルベルト自身はそれほど政治や財界で君臨したいという欲求はなく、今現在の実家の維持以上の野望を持つ事もなかったので、世間では裏で画策する輩がいると言うのは知ってはいたが、巻き込まれる事も必要以上に興味を持つ事もなかった。
ゆえに現状圧倒的にデータ不足だ。
だからおそらくそれに通じているらしいフェリシアーノの情報は欲しい。
言ってる事は正論だし矛盾もない。
政財界に影響やコネがあったりする実家を持たないアーサーの人権が軽んじられる可能性と言うのは否定できない。
もちろん手は尽くす。
これからは情報も集めて備えるつもりではあるが、果たして間に合うのか……
そうは思うものの、あと一歩…あと一歩、自分とお姫さんの危機管理の一端を任せる相手としてはフェリシアーノに対する信頼が足りない。
どれだけ取り繕ってもその点は百戦錬磨のフェリシアーノに感情など隠せるわけもない。
そう諦めてギルベルトは綺麗な形の眉を寄せて、真剣に考え込んだ。
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