寮生はプリンセスがお好き4章_19

「最終的に全部話すけど、まず結論。
今回の諸々、たぶんただのイベントじゃない。
人も本当に死んでると思う。

でも当たり前だけど今回のは俺が企んだ事じゃない。
前提として、俺は色々あって今回の理事長の交代劇がすごく不穏な状況の中行われてる事については知ってたのね。
これについてはあとで話すけど、とりあえず先に今回の事について。

俺は普通にたぶんギルベルト兄ちゃん達と同じように招待された生徒の1人なんだけどさ、着いてみたら色々怪しいわけ。
事前情報も持ってたから俺は余計にそう思っててね、エントランスの甲冑も怪しければ、窓にしろドアにしろ、一度入ったら簡単に出られない仕組みになっているのも怪しいと思ってた。

で、控室。
どこで見られてるかわかんないから単純に退屈しのぎのフリしてあちこち触って回ったけど、銀系の副寮長用の控室に関しては特に仕掛けらしい仕掛けはなくて、俺はお国柄というか育った環境がらというか、毒薬系にも若干知識があるんだけど、用意されてたドリンクにも特に何か仕込まれてるとかはなかった。

ドアに関しては城と一緒で内開きだったから、最悪閉め切って内側から家具とかで押さえれば籠城も出来るしね。
まあ安全地帯だと思ったよ。
だからアーサー引きとったの。

相手が何か企んでて完全に相手側のアウェイでって言う感じだったから、あそこであまり揉めると強硬手段に出られかねないからね。

もちろんアーサーに危害加える気は全然?
だって俺、ギルベルト兄ちゃん味方につけたいって思ってるし、実際そう言い続けてきたでしょ?
将を射んと欲すれば先ず馬を射よって言うしね。

ギルベルト兄ちゃんを動かそうと思ったら、兄ちゃんの大事な大事なお姫様に気に入られるのが一番手っ取り早いから。
これからもそれは変わらないと思うし、兄ちゃんまで中立通りこして敵にまわられたら俺さすがに終わるからね。
だから安心して良いよ。
下心はあるけど、アーサーには絶対に危害加えないし、優しい良いお友達で居続けるから。

というわけで控室ではちゃんと俺が毒見済みのジュース飲みながら学校の話とか副寮長の話とか、あとは俺が有力者の家だらけのこの学校の中では後ろ盾がないに等しい家の出身で心細いからギルベルト兄ちゃんにも仲良くして欲しいみたいな話とかね?そんなあたりさわりのない会話してた。
で、まあ時間になって合流してあの惨劇だったわけなんだけど…ギルベルト兄ちゃんはどう思った?」

「どう思ったってのは?」

「うん、イベントにみせかけてたけど、実は本当に人が死んでると思ったから俺のとこ来たわけでしょ?」

「あー………。
どうせフェリちゃんも気づいてんだろうけどな。
最後に出て来たバトラー、あれ、俺らを城内案内した男だろ。
最初に挨拶に出たバトラーは本当に死んでて、案内役の男が着替えて入れ変わってたよな」

「…どこで気がついた?」

「んー…利き手?
最初の乾杯の前にな、案内役は左手でドリンク注いでたから、ああ、左利きなんだなと漠然と思ったんだ。
で、バトラーの乾杯の手は右手。右利きだよな。
でもって、最後にバトラーの格好して出て来た男は椅子を左手で引き寄せてたから、状況からして、ああ、これはもしかして…と思った。
たぶん…寮長全員にマスク被せたのも、そういう趣向に見せて案内役とバトラーの入れ変わりをごまかすためだよな」

「さすが兄ちゃん、よく見てるね」

「そういうしらじらしいお世辞は良いから。
フェリちゃんだって気づいてたんだろ」

「ん~、だって俺は“彼らが”何か企んでいるって前提で動いてそういう前提で観察してたから」

両手を胸の前で合わせて、普通の人間なら思わず微笑ましく思わずにはいられないような愛らしい笑顔を浮かべるフェリに、少し顔をしかめるギルベルト。

だがフェリシアーノはそんな反応にめげる様子もない。
あくまで笑みを崩さずに続ける。





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