ショタペド戦士は童顔魔術師がお好き【第一章】1

「ほんま、魔術系って……。冗談やないわぁ~。
あいつらすぐへばるし文句多いし、勘弁したってや~。
もうアホでもこの際黙って歩けりゃええわ。普通の戦士つけたってや!」


城の中枢部のピカピカに磨きこまれた大理石の廊下から渡り廊下を渡って、使い込まれて若干古びてはいるが上等の絨毯の敷き詰められた上級兵士用の宿舎の廊下へ。

アントーニョは幼なじみであり同僚でもある悪友二人+幼なじみのエリザと共に上司であるこの国バンブーフォレストの最高司令官ローマに呼び出された帰りであった。

癖のある茶色がかった黒髪に褐色の肌。
悪友3人の中では一番わかりやすく筋肉がついていて引き締まった体躯。
太陽のような…と称される明るい笑みを浮かべていれば人懐っこさ全開、親しみやすい空気を振りまいているくせに、一度戦闘となってその顔から笑みが消えれば、おそらく悪友3人の中で一番容赦がない鬼神に変貌する。

世話好きな皆の親分として、部下はもちろん城内城下の国民にまで人気のこの男は、そんな風でいて実は悪友で一番人の好き嫌いが激しい。
魔術師系の男を毛嫌いする一方で、無類の子供好きで、悪友達からはショタペドとからかわれるほどである。
もちろん…からかったあとには単純な腕力ではローマに勝るとも劣らぬと言われる力での報復が待っているので、からかう悪友達も命がけではあるのだが…。

そんな感じで、その慈愛と寛大な精神は小さな子ども以外には向けられず、
『おやぶ~ん!!』
と遠くから手を振る、城で働く使用人達の子ども達に笑顔で手を振り返しながらも、隣を歩く悪友達にこぼすのは冒頭のような言葉だ。
動作や表情と話している内容が全く違うあたりが器用な男だと、悪友二人は苦笑した。


バンブーフォレスト共和国は小国家の集合体。
小国家といっても各国は元をたどれば祖を同じくする…ようは遠い親戚だ。
それでもかつては多くの国々が群雄割拠し覇権を争っていたが、現代では共通の敵を前にして団結を余儀なくされている。

その要因となったのが、カルト集団【コンペイ党】。
いつの頃からかどこからかもわからず現れたこの集団は目的は定かではないが、バンブーフォレストの住民を脅かしている彼らが操る魔人の前には、通常の攻撃は全く刃が立たなかった。

しかしバンブーフォレストの中央部に位置していたサンサークル寺院内に保管されていた古文書には、記されていたのである。
『神に背きし者を滅する武器』についての記述が…。

必要な時期に適した持ち主が現れれば自分自身で己が使い手の元に現れるという12の武器。
その武器でなら全ての魔を滅する事ができるという。

そしてこの4人は数年前、まだ士官養成学校の在学中に、ほぼ時を同じくして武器に選ばれているのだ。

全てを叩き潰し勝利と成功へと導くルビーアックス、魔を惑わすサファイアハープ、妖を貫き魔を払うヘマタイトサーベル、悪をなぎ払い未来を切り開くカーネリアンソード。

それがアントーニョ、フランシス、ギルベルト、そしてエリザがそれぞれ選ばれた武器である。

今から9年前、アントーニョ達が11歳の時、ローマ以外の伝説の武器を操る武人が最後に亡くなってから25年。

それまで魔人が出るたび一人で戦い続けていたローマの他に悪友3人とその幼なじみの少女エリザの、計4人もが伝説の武器に選ばれた時には、本当にお祭り騒ぎだった。

そしてその後はベテランで武人としてのピークを過ぎかけていたローマは後続の教育者、そして彼らと兵士達の連携の指揮を取る者として後ろに下がり、現在は首都であるサンサークル周辺はほぼ4人で対応している。






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