寮生はプリンセスがお好き4章_17

陰謀と策略の学園

――あまり拒否するとかえって危険な事になると思うよ?
毎年恒例なはずだった新寮長と副寮長の交流会。

いつもとは違う趣向。
殺人事件が起こって自分達も命を狙われているという設定。
結局最後は死んだはずの主催者も普通に出てきてめでたしめでたしだった。

……が……

(本当に…?)
ギルベルトは違和感を拭えない。

そもそもが城内に入った時から…いや、そのずっと前から、誰かに監視されているような嫌な空気を感じていた。

もちろんプリンセスに不安な思いをさせるわけにはいかないので、敢えて気付かない何でもないふりをしていたのだが、実際はずっとまとわりつく嫌な空気が気になっていた。


ひどく冷ややかで酷薄な視線。

それがハッキリ自分達に向けられた殺気か何かなら、寮としての評価がどうなろうと、よしんばそれで学園に在籍できなくなったとしても、お姫様の安全にはかえられないので断固として引き返すところなのだが、正直判断しきれず、ついつい流されるまま城内に入って後悔した。


まず扉だ。
内開きの鉄の扉。
中に入って閉まった扉にチラリと視線を向けて確認すれば、ドアノブのような物がない。
ということは、内側からは特殊な仕掛けで無いと開かないと言う事だ。

閉じ込められた…と、まず後悔して、決断を先送りにした自分を呪った。


そしてエントランスに並ぶ甲冑。

プリンセスが怯えていたこれも、ただの甲冑ではないというのは瞬時に見て取れた。
何かただの空洞ではない気配を感じる。

だが、これもこうなってしまえば今現在、危険な状況かもしれないのに対処しようがないなどと、間違ってもプリンセスには悟らせるわけにはいかない。
それにも用心しながらもなんでもないふりで、案内されるまま二階へ。


そこで寮長と副寮長、別々の控室にと言われた時には当然ながら断固として拒否した。

最悪案内役を人質にとって脅してでも…と、怯えるアーサーを抱え込んでそう思っていると、副寮長用の控室から出て来たフェリシアーノが言ったのだ。

――あまり拒否するとかえって危険な事になると思うよ?
…と。


フェリシアーノ・ヴァルガス。

プリンセスらしくおっとり愛らしく、生徒としては少し足りなくて少年としてはちょっとヘタレ。
だがそこが可愛らしい。

それが彼の表面的な評価だ。

しかし人物像を深く観察する習慣を持つギルベルトは、彼が表面的に見られているような人物出ない事をいち早く見抜いた。

そして…とても聡いフェリシアーノもまた、ギルベルトが見抜いた事を即察して、それ以来、しばしば秘かに協力関係を保っている間柄だ。

だからこその彼の本音。

彼自身を心の底から信頼できるかと言えば否だし、彼に大事なお姫様を託したいかと言うとこれも否なのだが、彼が今自分と敵対する気が無い事は見て取れるし、今が危険な状態であると言う事を認識した上で、暗に自分はアーサーを守れるし、主催の意志にそぐわない行動を取れば危険が及ぶと言われれば、自身の安全等どうでもいいが、アーサーの安全のためには託すしかないと思い、託した。

そう、理由はわからないが、自分は確かにあの時の状況を危険だと感じ、フェリシアーノもまた危険だと認識していたのだ。

気のせいではないと思う。
そして…これで危険が終わると言う保証があるわけではない。
そう思うと、放置するわけにも行かない。


…仕方ねえ……

「お姫さん、今日のお休みの護衛はルッツとティディベアな。
俺様ちょっと今後の計画とか相談しに銀竜寮行って来るわ」







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