寮生はプリンセスがお好き4章_16

ざわめく室内。

一瞬戸惑う生徒達を遠目に、バトラーはクスクス笑いながら左手で椅子を引き寄せると腰をかけて足を組む。


「なるほど。
一応イベントの主役は1年坊主ってことか」
「よ~く考えろよ、最初のイベントで減点されるか加点されるかは大きいぞ~」
上級生たちはすでにイベントは終わったものとして他人事だ。


そして顔を見合わせる香とギルベルト。

「…どうするよ?」
「あー…任せる的な?
俺はそういう決断下すように育ってないって感じ?」
「そうか…じゃ、俺様の考え言うな?」
「おっけー」

実に簡単に相談を終えて、ギルベルトはバトラーを向き直った。
そして言う。

「生かすのは銀虎と銀竜の寮長と、他の寮の姫達」

ざわり…とまた場がざわめく。

バトラーは、ほぉ?とピクリと眉を動かした。

「銀虎と銀竜だけ寮長なのは?」
と当然のように返ってくる質問に、ギルベルトはまっすぐバトラーに視線を向けたまま言った。

「城主が生きて学校まで戻すと言ってねえから。
姫達だけだと城から出たあとに生きて帰れねえ可能性がある。
だからガードできる寮長が何人かは必要。
で、俺様は自寮のお姫さんを死なせるなんて選択は到底できねえし、そこは姫を生かしてだすの決定として、学園は確かに寮対抗ではあるけど物によっては金銀対決になるから、そうなると銀側の姫はうちのお姫さんだけで、他の寮で代理がたったとしても敵わねえだろうから、戦力としてうちのお姫さんの安全をキープしてくれる可能性があるのは銀寮側の寮長だから。
逆に金寮側の寮長がいると、自寮のメインの姫がいなくなって自分の側が不利になるからな。
お姫さんを害される可能性が高い」

「な~るほど。
戦略としては素晴らしいし、上にたつ者としてもシビアでよろしい」

パチパチと手を叩くバトラーにギルベルトは少し不機嫌な様子で

「シビアじゃねえよ。
単に俺様は俺様のお姫さんが大事なだけだ。
お姫さんを絶対的に幸せに出来て余裕がありゃ他を助けても良いけど、そうじゃねえなら俺様がどれだけ極悪な事に手を染めたって後ろ指さされたって、お姫さんだけは真っ白で幸せな状態で置いておきてえだけだ。
俺様はお姫さんだけの剣だからな」
と口を尖らせる。

「あーもう愛されてるねぇ」
「いやいや、可愛い、可愛い」
「鬼の軍曹がこんなにメロメロなのか」

最後…本来は非常に真面目にして重要な場面なのだろうが、結局上級生たちにからかわれながら、どうやらイベントは終わったらしい。


「もうあの軍曹のあんな様子見てると憎めねえわ。
まあ寮勝負になったら容赦はできねえけど、そうじゃない時はまた話そうな」
「おチビさん、またな~」
などなど、ポンポンとやたらと頭をなでられながら、アーサーはギルベルトに連れられて再度馬車で寮に戻ったのだった。


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