寮生はプリンセスがお好き4章_12

そのわずかな間にも在校生の間の会話は続いていて、

「ね、今年卒業した先輩って聞いてたんだけど…ってことはもうドレス着なくなって7年くらい?
でも普通に似合ってて綺麗だよねぇ。
俺も大人になってもたまには着られるかなぁ」

小声で言うフェリシアーノにアルは嫌そうに

「俺は中学卒業したら二度と着たくはないんだぞ」
と眉をしかめた。


そんな2人を見て、周りはみんな、そうだろうなぁと苦笑する。

「それでは皆様、お手数ですがまたグラスをお取り下さい。
全員揃ったところで再度乾杯をしたいと思います」
と、そこでバトラーの声がして、各自ほとんど口をつけただけのグラスをまた手に取った。

唯一さきほどから飲み食いしていてグラスが空なアルが

「中身なくなっちゃったからいれてくるんだぞ」
と、テーブルに行こうとするのを香が

「この時間にそこまで暴飲暴食してブタに育ったら、俺が王大人に怒られる的な…」
と、嫌そうな顔をして言ってそれにまたアルが言い返して口論になりそうな雰囲気だったので、アーサーは間に入る事にした。

「な、もう時間ないし、今は俺の半分分けるんじゃだめか?
…口…つけちゃったから嫌か?」
と、アルの腕を取ってその顔を見あげつつ言うと、何故か真っ赤になるアル。

ブンブンと首を横に振るのを見て複雑そうな表情の香。

「あー、アルはそういうの気にしねえだろ。
だから俺様のやるよ。
俺様あんま夜に甘いモン摂取する習慣ねえから」

と、そこで何故か少し不機嫌な口調のギルベルトが有無を言わさずアルのグラスを奪い取ってそこにドボドボと自分のグラスの中身を半分注いだ。


「…あ……」
と、残念そうな声をもらすアルに吹きだす香。

ギルベルトはアルにグラスを返すと、何故かグイッとアーサーを引き寄せた。

「…??」

アーサーがわけがわからずきょとんとしているとツツっと擦り寄って来たフェリシアーノが

『ギルベルト兄ちゃんが焼きもち妬くのなんて初めてみたよ』
と耳打ちしてきて、それで初めて事態を察したアーサーは動揺しつつも真っ赤になる。

ことが起こったのは、そんな下級生組を上級生組が生温かい目で見守る中、バトラーの口から乾杯の音頭が告げられ、それぞれだいぶ生ぬるくなってしまったグラスの中身に口をつけた時だった。


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