でも神様の前で愛を誓ったのだ。
どんなに離れてしまったとしても、神様がまたひきあわせてくれるとアントーニョは信じている。
だから、それなりに人当たりがよく、容姿もどうやら異性受けするように育ったアントーニョはかなりモテたが、特別な相手は作らなかった。
割り切って遊べる子しか相手にしない。
あの子にあったらすぐプロポーズしなければならないのだから。
それもあって、アントーニョは今回のバイトもやりたかったのだ。
あの子に会えたらとびきりのマリアベールを用意して、今度は指輪も渡してやりたい。
700万あったら十分すぎるくらいのものが用意できるだろう。
彼女と結婚して健やかな生活が送れるように、あーちゃんが外国に行ってしまってからのアントーニョは頑張った。
元々あまり机に向かうようなタイプの子どもではなかったが、将来彼女を養っていかねばならないので、一生懸命勉強もして、まあ1流の部類にはいるであろう大学にも入り、長期の休みはバイトをいれて貯金もした。
人当たりはもともと良かったので、教授受けも良く、友人も多いし、運動もそこそこやって、体格もスタイルも悪くはないと思う。
明るくてイケメンで頭も良くてスポーツ万能…そんな評価をとるまでになったアントーニョの感情は、しかし、幼いあの日のまま止まっているのだ。
『お前…いまだにそんなこと言ってるの?』
と、小学校時代からの悪友には呆れられるが、素晴らしい評価を得るにいたった今までの努力はすべて、あーちゃんをお嫁さんにするためだ。
彼女以外をお嫁さんには絶対にしない。
見つからないようなら、探偵でもなんでも雇ってその行方を追って、見つけ出して迎えに行くこともやぶさかではない。
そんなアントーニョにとっては、あーちゃん資金をさらに貯めるのに今回のこの割の良いバイトはぜひともやりたいものだったし、あちこちにポスターが貼り出されれば、もしかしてあーちゃんがそれを見て訪ねてきてくれる可能性だって皆無じゃないかもしれない。
が、あーちゃん以外の特定の女の子と長期にわたって一緒というのは少し気が咎める部分もあったので、相手が女の子じゃないというのは、アントーニョ的にもホッとするところなのである。
しかしながら…しかしながらだ、さすがにハイティーンの男の花嫁は辛いんじゃないだろうか。
何かのコメディではないのだ。
一応一流のホテルのウェディングの宣伝がそれでいいのか?
(まあ…親分はバイト料もらえればええんやけど……)
と思いつつも心配になるアントーニョだった。
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