寮生はプリンセスがお好き4章_11

それからは普通にみな普通に歓談…一部腹ごしらえ。

「ちょ、もうそんな欠食児童みたいな食い方すると王大人が泣くんじゃね?」
と、呆れた顔の香の横で黙々と飲み食いするアル。


「だってさ、こんな時間まで起きてたらお腹すくのが当然じゃないかい?!
それに控室のポテチ、美味しかったけどちょっとしょっぱかったから喉乾いたし」

「…普通つまむ程度でこんな正装してそんなにドカ食いしねえし…」
香は言って軽く首を横に振った。


「ギル、交換しね?
ちょ、俺じゃあのプリンセスフォローしきれねえ的な…」
と、もうアルのコントロールは早々に諦めたのだろう。

そう言いつつ香がスッとアーサーの手を取って恭しく礼をしてみせると、ギルはその手を取りかえして

「誰だろうと俺様の大事なプリンセスは譲れねえ。
他あたれ」
と、アーサーを腕の中に閉じ込めた。

それにクスクス笑うフェリと無言で赤くなるアーサー。

「今年の1年は金銀の寮長と副寮長、対照的だな」
と、他の上級生たちも加わって、何かと寮対抗になると言いつつ皆和やかな雰囲気で時間が過ぎていく。

金狼寮の2人とフェリシアーノ以外とは初めて会うわけなのだが、あまりに皆にこやかすぎて不思議なくらいだ。

そんな事を思いつつポカンとしているアーサーに、上級生の1人が

「どうした?銀狼寮のお姫様?」
とやはり優しげな笑顔で聞いてくるので、一瞬迷ったが結局

「学校は全部寮対抗と聞いていたので…そのわりに皆さんすごくお互いに和やかだなと思って」
と、正直に答えると、上級生たちはちょっと顔を見合わせて、それから皆吹きだした。

「あー、そう言う事ね。
そっか、外部生だからな、何もかも初だもんな」
「いやいや、うぶで可愛いねぇ」

「あんまうちのお姫さんからかうと遠慮なくぶちのめしますから、先輩?」
笑う上級生たちに、やっぱりにこやかに物騒な事を言うギルベルト。


「はいはい。菊さんの頃で懲りてますよ、鬼軍曹?」

上級生たちが笑いながら揃ってホールドアップすると、ギルベルトは小さく肩をすくめて腕の中に抱え込んだアーサーを見下ろした。


「ここは寮生いねえからな。
自分が攻撃行動に出たらみんな自寮のお姫さん守れねえだろ?
各寮長それぞれに腕に覚えがある奴ばっかだしな。
だから寮長と副寮長しかいない場では争い事は禁止ってのが暗黙の了解なんだ。
ってことで、どうせ攻撃行動に出れねえなら楽しく情報交換しようってこった」
と言うギルベルトの説明に、

「そそ、そういう事よ。お姫ちゃん」
と、上級生たちがうんうんと頷く。

なるほど…と、アーサーは納得しつつも感心した。

「ほら、あんたも食ってばっかいねえで、ちょっとは顔売れ的な?」
と、そんな中でさすがに香がアルをテーブルから引きはがして話の輪の中へと連れてくる。

「おー、でけえな、金狼寮の姫。
王のとこの養子だっけ?
あれか、副寮長なのは王の差し金か?」
「そっすね」

「お前よりでけえんじゃね?」
「あー…横幅はそうかも的な?」
「大変じゃん」

「それに比べて銀狼はちっちぇえな~。
去年まで小学生やってましたってわかる感じだな」
「うんうん。可愛いな。
鬼軍曹が抱え込むのわかるわ」

「うちも1年の頃はちっちゃかったんだけど、ちっと背伸びたか」
「あー、うん。俺も2年間でちょっと伸びすぎちゃったね」
「いやいや、でも可愛いから美人になったから無問題。
今年のベストプリンセスは俺ら金虎寮で決まりだな」
「いや、うちのフェリに敵うプリンセスはいませんよ、先輩」

などなど、他のプリンセス評価から自寮のプリンセス自慢まで盛り上がりつつ歓談していると、しばらくして広間のドアの方から人が駈けこんでくる。


「遅れて申し訳ありません」
と、やはり白いドレスに身を包んだその人は、おそらくフェリシアーノやバトラーが言っていた先輩、サースガードなのだろう。

さすがに中等部組と違って少女のようとはいかないまでも、細身ですんなりと背が高く、女性モデルのように見えなくもない。
やはり伊達に元プリンセスではないということか。
今でも十分に綺麗な青年だ。

「これで全員揃いましたね」

と、その姿を認めてそれまで少し離れて学生達の歓談風景を見ていたバトラーはそう言うと、さきほどの乾杯の時のまま持っていた自らのグラスの中身を飲み干すと、もう氷が大半とけてしまったジュースのピッチャーから遅れて来たその人に渡す新しいグラスにジュースを注ぐのと共に自らのそれにも注ぎ直した。



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