The escape from the crazy love_6_1

帝国様降臨

――ああ…これは噂の……

スペイン宅に集まって2日後、家主が戻ってきた。
しかし戻ってきたのは家主だけではなかったらしい。

まず…どうみてもイギリス当人と…それから家主の中に色々なオーラ。
なんだかキラキラ…いやギラギラしてる?

あるぇ~?
といった感じに首をかしげるイタリアと、その隣で怯える兄ロマーノ。

『もしかして…現役時代はこんな感じの方だったんですか?』
と、それを捕まえて小声で聞くと、

『ん~、当時は俺オーストリアさんの所だったし、そんなにスペイン兄ちゃんと親しくなかったから…』
とイタリアが、

『スペインの野郎何しやがったんだっ!
まさかあの頃の何かを引きずってイギリス様に何か?』
とロマーノがそれぞれ口を開く。


そんな中

「日本っ!日本、日本、日本っ!!!」
集まった顔ぶれの中に日本の姿を見つけて、ぱあぁ~っと顔を輝かせて駆け寄ってくるイギリス。

ぎゅうっと子どものように抱きつかれ、元々スキンシップ過多なタイプではなかっただけに、日本も目を丸くする。

もちろんそれがスペインと過ごした半月間の影響だとは思いもしない――イタリアは感染るというが、イタリアだけでなくラテンは感染るもかもしれないと、のちに事情を知った日本は思うのだが……。


日本自身もそれほどスキンシップの多い国ではないが、相手が心の嫁のイギリスなら嫌ではない。
それどころか大変可愛らしく至福なわけだが、イギリスがこっちに来るのに置いてきた帝国様の視線が怖い。

大国の圧力というものをヒシヒシと肌で感じながら、イギリスの肩越しに目を向けると、ピタっと視線が会う。

一瞬…ほんの一瞬笑っていない底知れぬ目を向けられて冷やりと背筋に冷たい汗をかくが、次にはニコリと微笑まれる――笑顔も…怖い――

「ちょお親分これから皆に協力頼まなあかんことあるんやけど…アーティの事お願いしてええ?」

と、それでもヒクリと何か押し殺したような声で言われて、思わずプロイセンがさりげなく日本をかばうようにその間に立つが、当の日本の脳内では……


アーティ呼びキタ━(゚∀゚)! 西英展開ktkr

「……日本……お前本音がだだ漏れてる」

脳内だけでは収まりきれなかった萌えがポロポロとこぼれ落ちていたらしい。
真剣に心配していたプロイセンががっくりとその場に膝をつく。

「ああ、申し訳ありません、私としたことが…」
日本はいったんイギリスから離れて床にへたり込むプロイセンの前に屈みこむが、その一連で帝国様から殺気が消えた。

「あ~…まあええわ。これまでの事情はアーティから聞いたって?
プーちゃんとドイツには頼みたい事あんねん」

クスクスと途端に親しげな空気をまとって帝国様は機嫌よくそう言うと、ヒョイッとプロイセンの襟首をつかんで立ち上がらせる。
とんでもない怪力だ。

「ああ、それとロマ」

そこでスペインはようやくいつもなら真っ先に駆け寄っていた元保護国の弟分に声をかけた。

「この子はうちの新しい家族のアーティや。
自分今までいっちゃん下やったけど、弟分の面倒、ちゃんとみれるな?」
キラキラギラギラと照らす太陽のような笑み。

その太陽に鷹揚な様子でそう言われた途端、ロマーノの震えが止まり、その視線がちらりとイギリスに向けられる。

視線を向けられたイギリスはイギリスで、少し不安げな視線をロマーノに向けた。

「…ええな?とりあえずメシまだやからなんか食べさせたって?
親分はなんか軽くつまめるもんでええわ」
「…ん。わかった」

具体的な指示が出たことにホッとしたのかロマーノがうなづくと、スペインは最後に、日本、イギリス、ロマーノと、スペイン、ドイツ、プロイセンに分かれて、どちらに行くべきかオロオロしてたイタリアに、

「あ~、イタちゃんはロマ手伝ったって?」

と、そう告げると、ドイツとプロイセンを引き連れて別室へと向かった。



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