餌付けで目覚めるヘタレ兄
決して美味いなどと口に出さない…というか、出す間も惜しんで詰め込んでいると言うのが正しいのだろうか…。
もともと幼さが抜け切れない柔らかそうな淡いバラ色の頬いっぱいに自分が作った料理を詰め込んで、澄んだ大きなクリっと丸い目を輝かせている様子は、まるでリスのようだ。
え?今俺何考えた?!
いやいやっ!
スペインと違って…俺はペドじゃねえ…俺はペドじゃねえ…俺はペドじゃねえ…
と、脳内で何度も唱えつつも、イギリスがもっきゅもっきゅと幸せそうに空にしていく皿にせっせと新しい料理を取り分けてやるロマーノがいた。
たとえヘタレでもお兄ちゃんで…しかしそれまではトマト一家の中では一番年下だったために、その矜持を発揮する場所もなかっただけに、自分がやってやったことに対してここまで幸せそうな顔をされると、ロマーノの中の兄的何かがキュンキュンと刺激される。
そんなロマーノの葛藤に更に追い打ちをかけるように日本のつぶやき…
――イギリスさんて……4人兄弟の“末っ子”なんですよねぇ……
うあぁああ~~!!末っ子?!伝説の末っ子かぁ!!!
長男が絶対に敵わない相手っ…それが末っ子!!!!
俺が絆されても仕方ねえじゃねえかっ!!!
――あ…口元にソースが……
と、ナプキンを片手に伸ばした実弟のイタリアの手をビシっとはたいてナプキンを取り上げ、食べるのに夢中になっているその小さな口元についたソースをロマーノが拭ってやると、イギリスは一瞬目をぱちくりさせて――そういう表情をすると余計に幼さが際立つ――少し恥ずかしそうに小声で
――サンクス。
とつぶやく。
そのサンクス…の後ろにロマーノの脳内では“お兄ちゃん”の一言が追加されて、ぐわんぐわんと頭の中をかけめぐる。
――あかん!あかんあかんあかん!!めっちゃかわええ!!!
と、何故か宗主国の言葉で脳内リピートを繰り返すロマーノを遠目に
――日本…なんだか兄ちゃんが怖いよ?
と、イタリアがボソボソっと小声で日本に囁くと、日本はグっと親指をたて
――大丈夫っ!世界は西英だけじゃなく緑目組も求めているんですよっ!
と、どや顔で語る。
――ヴェー…ドイツぅ~みんな怖いよぉ~~
パタパタ小さな白旗を振りながら習慣でドイツに助けを求めるイタリアのか細い訴えが、リビングの隅へと消えていった。
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