寮生はプリンセスがお好き4章_8

宴の惨劇

それからはフェリシアーノと2人、和やかにおしゃべりに興じる。
実際、今現在の中等部の諸々やプリンセスの仕事のあれこれなど、なかなか興味深い話が多く、話し混んでいる間に時間はあっという間に過ぎていった。


トントンとノックの音がして、フェリシアーノと2人並んで出ると、そこには先ほどの案内係の男がいて、その後ろにホッとした様子のギルベルトと、もう一人見知らぬ高校生が立っている。
おそらくフェリシアーノの銀竜寮の寮長なのだろう。

「お姫さん、無事で良かった」
と、手を広げるギルベルト。
アーサーが迷わずその手の中に飛び込むと、ぎゅっと筋肉質な腕で抱きしめられた。

フェリシアーノが一緒だったので癒し効果でこれまで心細さも忘れていたが、こうしてギルベルトの側に戻ってくると、心の底からホッとする。

そんなアーサー達の横では銀竜寮の寮長がフェリシアーノの白い手を取って口づけ、フェリシアーノはその手を優雅な動作で寮長の腕に回し、その横には今回はプリンセス不在ということで所在なさげな銀虎寮の寮長。

案内の男はそんな皆の様子に構わず、
恭しく礼をしつつ、

「大変お待たせしました。
まだ卒業生のサースガード様がまだいらしておりませんが、時間もだいぶ過ぎましたこともあり、交流の宴を始めたいと主が申しておりますので、広間までご案内させて頂きます」
と、告げて促すように先頭に立ってゆっくり歩き始めた。

それを慌てて追う5人。

(お姫さんが素直に抱きついてきてくれるなんて珍しいな。心細かったか?)
と歩きながら小声で問うギルベルトに、アーサーは

(いや?フェリが一緒にいてくれたから。すごく楽しくて時間がたつのあっという間だった)

と、それは事実であるのと、フェリシアーノが自分に親切にしてくれたのだと言う事を強調して少しでも好感度をあげられればという主旨の元にそう答えると、ギルベルトは

(ありゃ。しまったな。俺様フェリちゃんに負けたかぁ)
とおどけたように笑う。
そんなギルベルトにつられてアーサーも小さく吹きだした。

最初の緊張が嘘のようである。

その隣ではフェリシアーノと銀竜寮の寮長が優雅に歓談中だ。

有力な実家ではないとは言うが、それでもアーサーのような本当の一般庶民とは違って、こういう正装での立ち振る舞いも板についているような気がする。


来る時はあんなに怖かった廊下に立ち並ぶ甲冑もその存在すら忘れるくらい気にならなくなっていて、軽い足取りで一階に降りていくと、先ほどまでは閉まっていた、階段に挟まれるようになっていたドアが大きく開いて、やはり全てランプと松明を中心にした光源のようだが、天井に吊るされた大きなシャンデリアや壁を囲むように設置された灯りのおかげで他の場所よりは随分と明るく感じる広間に案内された。



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