廊下を入口の方へと戻って行くと、絨毯の敷いてあるエリアの一番手前の部屋のドアの所に持たれる青年。
手には赤い羽根の扇を持っている。
父親であるはずの牛魔王が死んだと言うのに、口調も顔に浮かべる笑みも不自然に明るくて、その異様さにギルベルトは眉を寄せた。
「うん、君の言いたい事はわかってるんだぞ☆
何故俺が父親である牛魔王が死んだのににこやかにしているかって言う事なんだろ?
答えは簡単さ。
牛魔王は悪で俺はヒーローだからさっ」
なんというか…このわけのわからない独特な方向性とポジティブぽさが、今頃まだ牛魔王の部屋で鼻血の海で泳いでいるであろう同僚を思わせる。
「俺は正義のヒロインと悪の魔王の間に生を受けたわけなんだけどね、だからこそ自分が正義であるという事を自らの手で証明しなければならないという宿命があるんだよ。
それには…うん、とりあえず武器は必要だからね。
素手じゃさすがの俺でも強力な武器を持った巨悪は倒せないし、最初の敵牛魔王退治は君達に譲ったけど、これからは俺が悪を退治して行くから、君たちはゆっくり旅路を行けば良いんだぞ。
とりあえず、火焔山の火はこの芭蕉扇で消しておいたから」
じゃあね。Bye!と、ひらひらと手を振りながら走り去る妖怪との混血の青年アルフレッド。
言葉通り取って良いかと疑うところではあるし、引きとめた方がいいのかもしれないが、強力な妖怪とおそらく強力な霊力の巫女の間に生まれた彼の力は素でもかなり強大である事は見てとれるし、それがさらに強力な武器を手にしているとなれば、いくらギルベルトと言えども1人で宝杖一本で対峙するのは、さすがに無謀だ。
まあ…暴走しないとは限らないが、当座は敵対する気もなさそうではあるし、これ以上どうしようもないだろう…。
そう判断して、ギルベルトは待ち合わせの山の麓へと急いだ。
こうして無事に牛魔王を倒して火焔山の火を消し止めて、村に戻って一件落着。
全裸にバラのフランシスが若干引かれたりはしたものの、戦闘で服がダメになった旨を説明すれば、当たり前に代わりの上等な衣服が用意された。
全身牛魔王に舐めまわされて気持ちが悪いと言うアーサーには風呂の用意。
さすがに色々懲りているのか1人になりたがらず、裾をしっかりと掴まれれば、アントーニョとて無碍にも出来ず、こんな危機感の欠片もなく育てた空の上の兄貴分に心の中で恨み事を言いながら、なるべくその肢体に目をむけないように風呂に同行する。
初っ端からこの大騒ぎ。
この先どうなることやら…。
村の好意に甘えて今後の旅のために分けてもらう事になった必要な物品のチェックをしつつ、ギルベルトはため息をつく。
西へ向かうぞ、GoWest!
1人と3匹+1の旅はまだまだ始まったばかりである。
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