寮生はプリンセスがお好き4章_9

広間の中央には大きめの丸テーブル。
その上には綺麗に盛り付けられたオードブル各種と乾杯用のグラス。
それにコロンコロンとまんまるの氷の浮かんだグレープジュースらしき飲み物が入ったピッチャーが設置してある。


「うわぁ~全部電気じゃなくて蝋燭やランプだけど、これだけ揃うと明るいし綺麗だねぇ」
と言うフェリシアーノの明るい声。

それだけでも十分空気が明るくなるが、さらにそこに一歩遅れて案内されてきたらしい聞きなれた明るすぎるのを通り越して緊張感がふっとぶようなアルの叫び。

「喉乾いたんだぞぉぉ~~!!
ポテチを置いておいてくれるのは良いけど、そこはちゃんとコーラも置いておいて欲しかったんだぞっ!
ひゃっふぅ!!でもこっちにはちゃんと飲み物が用意してあるんだねっ!
コーラじゃないのは残念だけど」

その声に目を丸くして振り向くフェリシアーノ。
アーサーの横ではギルベルトが吹きだしている。

似合わない女装は正義…というのは誰の言葉だったか……

それぞれ黒のタキシードの寮長達にエスコートされた白いドレスのアーサーとフェリシアーノ、それにあと二組、同じ格好をしたおそらく金竜と金虎の寮長と副寮長も普通に場に馴染んでいたが、どうやっても良すぎる体格にドレスを身に付ける事になったらしい金狼寮の副寮長だけは、どこか貴人のパーティに紛れこんだコメディアンのような様相を呈している。

が、本人はそんな事はどうでも良いらしい。

目はひとえに大きな広間の中央、大きな丸テーブルに置かれた繊細な細工のガラスのピッチャーに入った飲み物へ。

そしてその隣では今にもテーブルにダイブしそうな相方を必死に抑える寮長の姿。


「あれ?金の方の控室には飲み物なかったのか」

と、そんなアルの言動に自分はフェリとジュースを飲んでいたアーサーが別の意味で目を丸くするのに、

「俺様達のとこには食いものも飲み物もなかったけど?」

な?と銀竜寮の寮長と銀虎寮の寮長に同意を求めるようにギルベルトが言って、2人は揃って頷いた。


「そうなんだ?変なの~」
と、首をかしげるフェリシアーノ。

「あんたねぇ…すっげえ恥ずかしいから叫ばないで欲しいんだけど?
マジありえねえ的な」
と呆れ顔の金狼寮の寮長の香。

彼はアルにいわく実はアルの養父の関連会社の社長の子息で、この学校でのお目付け役のようなものらしい。

そのせいかいつもアーサーに優しいギルベルトや、フェリシアーノを丁重に扱う銀竜寮の寮長と違って、アルに対して随分と遠慮のない物言いをする。

今もまだ何も言われていないうちにテーブルの上のグラスに手を伸ばしかけるアルの手をピシッとはたいて説教を始める。

そんないつもの光景にホッとした。
金狼寮の2人は良くも悪くも緊張をほぐしてくれる。



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