寮生はプリンセスがお好き4章_2

「さっきの先輩…」

「ああ、さっきのが2年生の銀竜寮の副寮長のフェリちゃん。
本名、フェリシアーノ・ヴァルガスな。
今一番プリンセスらしいって言われてるプリンセスだ。
俺様のプリンセス時代よりは参考になると思うぜ?」

そのままいつも昼食を取っている中庭のテラスへ着くと、ギルベルトはフェリシアーノがそうされていたように…そして普段からギルベルトがそうしているように、アーサーのためにチェアを引いてくれる。

それにアーサーが礼を言って座ると、自分も白いテーブルを挟んだ正面のチェアに座り、ランチを出してランチョンマットを広げたテーブルの上に並べた。

「すごく…可愛らしい人だったな」
別にひがみでも妬みでも自嘲でもなく、心の中にあるのはただただ感嘆。

可愛い物が大好きなアーサーにとっては、フェリシアーノはまさに“可愛い”の塊で、むしろ彼の寮の寮生だったら幸せだったかもとすら思う。

それを素直に伝えると、ギルベルトは『確かに可愛いよな』とそれに同意したあと、――でも…と、手を伸ばしてフルーツサンドを頬張るアーサーの口元についた生クリームを指でぬぐい、

「お姫さんの方が100倍可愛いぜ?」
と、ニカっと笑ってクリームのついた指先を行儀悪く舐めた。


――……!!!!
もう色々と言葉が出ない。

顔が熱い。
言われた事も恥ずかしいなら、アーサーの口元についたクリームを躊躇なく舐めるのも恥ずかしいし、ぺろりと指を舐めるギルベルトの舌先がなんだか色っぽくて正視できない自分も恥ずかしい。

そんな真っ赤になるアーサーも可愛いとさらに追い打ちをかけたあと、ギルベルトはまた手を伸ばしてきて、くしゃりとアーサーの黄色い頭を撫でまわした。

「まああれだ。
確かにフェリちゃんは可愛いんだけどな、別にそれを目指してくれってわけじゃねえんだ。
単にお姫さんが今まで目指してたみてえに文武両道じゃなくて、可愛いって言うのはそれだけで価値があるって事知ってもらうのに、フェリちゃんを見てもらうのが一番手っ取り早えかなって思っただけで。

お姫さんは今のままでも十分可愛いし、とりあえず勉強トップじゃなくても体力なくても本当に無問題だし、少なくとも今年はベストプリンセスとかも目指さねえでも構わねえ。
そうだな…今年の目標はとりあえず無理をしないこと、潰れねえこと。
任期が3年もあるからな。

これは簡単なようでいて難しい最重要課題だ。
それでなくても外部生で寮生としても一年目。
慣れない生活でたぶん自分で自覚してるよりずっと疲れてるはずだから。

今年は俺様が全部フォローする。
俺様が側にいられない中等部の授業中とかはルッツにフォローすべき事を指示しとくしな。
疲れる事を極力せずに楽にすること。
お姫さんが自分で努力しねえとならない事はそれだけだ。
来年度、慣れてきて心身ともに余裕が出てきたらベストプリンセスを目指すのに必要な諸々を考えりゃあ良い」

ベストプリンセス…と言うのは、年度末にある副寮長のコンテストのようなものらしい。
それは以前アルに聞いた事がある。
なんでもアルの義父は学生時代やはり副寮長をやっていて、中3の時にそのベストプリンセスに選ばれたとのことだ。

では親子揃ってそれを目指すのかと思えば、

――は?俺がかい?俺が目指すのは飽くまでヒーローでヒロインじゃないんだぞっ!
ときっぱり否定。

その上で
――そういうわけで俺は君を応援してあげるから、頑張るんだぞっ!
と、何がそういうわけでなのかわからない、謎な論理を展開されたわけなのだが……

まあそれは聞くところによると年度末だからかなり先なのでどちらにしても今気にする事ではない。
それよりも先ほどフェリシアーノが言っていた『交流イベント』だ。




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