とある狙われやすい少年について_3_冨岡姉弟

──姉さんの友人で冨岡蔦子さんと言う方がいらっしゃるんですが……

いつもはっきりした性格のしのぶには珍しく、少し考えこみながら口を開く。

──元々はご両親と姉と弟という4人家族だったんですが、最近ご両親が事故でなくなったそうなんですね…。

しのぶにしてはなんとなくハキハキ感がないのはそういうことか…と錆兎は納得した。

しのぶ達はもっとずっと幼い頃…カナエが小学生でしのぶが幼稚園児の頃にまず父親を事故で亡くしている。
その後は母が父と共に開いていた診療所を引き継いで一人できりもりしていたが、なかなか大変だったようだ。

そしてこちらも姉妹が高校と中学の頃に急な病で亡くなって、診療所を閉めて、両親の遺産をやりくりしながら、いずれ両親の跡を継ごうと姉妹揃って医者をめざし中という身の上なのである。

そんな状況だから、まだ学生の身で両親を亡くした友人についてカナエは他人事と思えずに手を差し伸べ、いつもは余計なことに首をつっこむなと姉を止めるしのぶも強くは言えないのであろう。

まあそういうことで、同情心もひとしおだろうし、関わること自体は仕方がない。
だが…しのぶがこうして自分に助けを求めているということは、そのかかわり方が問題なのだろう。

──で?その冨岡家の弟の方にはどういう実害を与えているんだ?

もう遠回しに言っても仕方がない。
毎回巻き込まれる人間としては今更なので敢えて”実害”と言わせてもらう。

悪気なく助ける気満々で…もちろん毎回ではないのだが、定期的にとんでもないことをやらかすのがカナエのカナエたる所以なのだ。

その”実害”という言い方をこちらも全く気にすることなく受け入れ、しのぶは眉間に手をあてて、はあぁ~っと大きくため息をつく。

──えっとですね…例によって明後日の方向の思い込みなんですが…
──ふむ?
──私たちの父が亡くなって親戚が寄ってたかって資産を持っていこうとした時にですね…
──あ~、そんなこともあったな。あの時は大変だったなぁ…
──母ではなめられてて…でも遠縁ということで悲鳴嶼さんが出てきた途端、引いたことが姉の中で記憶にあったらしく…
──……
──冨岡家も現在、大学生の姉、蔦子さんと弟の義勇さん二人が残されておりまして…
──うん。
──両親が居なくなって学生二人が残されたことで、やっぱり親戚が色々と言ってきてるんです。
──それで?でもお前たちの時と違って学生と言っても成人済みで、一人は男だろう?

その言葉にしのぶはまた大きく大きくため息をついた。

「それが…蔦子さんはしっかりした方らしいのですが、義勇さんの方は同級生の私から見てもかなりぼ~っとしたお坊ちゃんで…。
そもそもが早生まれなので成人していないのもあって、親戚がかなり干渉してきたがるそうです」

「なるほど。
できれば成人していない弟の後見人にでもなって、あわよくば資産を乗っ取ろうと、そういうことか」
「まあ…そうですね」

実にありがちな事象ではある。
だがそれで何をどうしたら実害を与えてしまうのかが今一つ想像がつかない。

なので、
──それで?カナエは何をやらかしそうなんだ?
と聞いてみると、しのぶは今日でもう何回目かわからないため息をつくと、

──呆れてもいいけど見捨てないでくださいね…
とすがるような眼で錆兎をみあげた。







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