──実は姉さんが厄介なことに首をつっこんでいまして……
大学の中庭のベンチの下、ペットボトルの紅茶を両手で持ちながらそういうしのぶは可愛い。
幼馴染の欲目を抜いても、一般人の域を軽く超えた可愛らしさだ。
彼女の同級生どころか、彼女を知る男子達がみたら羨まれることうけあいだが、これはもう、幼馴染兼家庭教師兼兄代わりの特権と言っていいだろう。
そんな彼女の姉のカナエことも、錆兎はもちろん知っている。
錆兎と同じ年齢で、こちらもしのぶによく似た絶世の美女だ。
両親を早くに亡くして遠縁の男性を名目上の保護者にしつつ、しかし実質姉妹二人きりで生きてきたのもあって、彼女もしのぶ同様にしっかりはしている。
しているのだが、こちらは若干善意と理想にあふれた独特な世界に生きているようなところがあって、錆兎もしばしばその思考についていけない。
良く言うならいわゆる天然というやつだ。
カナエには昔から一人振り回されかけるしのぶに付き合う形で一緒に振り回され続けてきたので、
──カナエ関係かぁ…で?今度は何にひっかかったんだ?
と、”今度は”という言葉が自然に出てくるくらいには振り回されてきたのである。
それにしのぶは苦笑する。
申し訳ないなぁと思いつつも、しかし錆兎がそれを許容してくれて、しのぶの力になってくれる姿勢を見せてくれていることにほっとしつつも感謝していた。
──えっと…ですね、例によって人助けをしたいらしいんですけど…
──また何かズレた方向に走ってるのか…
と、その一言ですでにある程度察してしまう。
そう、カナエはとても美人で頭も良くて気立てもよろしい。
その優しい人柄は老若男女問わず好かれている。
だが一つだけ問題が……
そう…善意の乙女なのだが、感性が若干…いや、かなりずれているのだ。
小さな親切大きなお世話…自分の常識は社会の非常識…そんな言葉を妹から日々投げつけられる程度には…。
──で?今度の被害者は誰なんだ?
と、錆兎はもうはっきりと言う。
救済される人、ではなく、迷惑をかけられている人という前提で。
そしてしのぶもそれを否定しない。
──姉さんの仲良しの同級生の…
──同級生の?
──弟で……
──ふむふむ…。
──そこまでなら私も放置を決め込む気は満々なんですけど、
──できない理由は?
──相手、私の高校の同級生なんです。
うわあ…それは…と錆兎も思った。
せめて迷惑をかける相手は厳選しろ…と言いたいところだが、カナエは迷惑をかけているつもりはなく、本当に善意のつもりなので、どうしようもない。
──下手すれば私の学生生活が終わります。せっかく行きたい学部の推薦のためにトップを撮り続けているのに…
と言われれば、もうここは錆兎としても放置はできない。
──なんとか助けてもらえませんか?錆兎兄さん。
──任せろっ。
と言うほかに、錆兎には選択肢は存在しなかった。
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