ペナルティらぶアナザーSBG_:12_罰ゲームだと?!_義勇視点

宇髄から錆兎が知りたがっていたので連絡先を教えていいかと聞かれて二つ返事でOKした時にはこんなことになるとは思ってもみなかった。

OKしてほんの10分後には初めて錆兎から連絡が来て、突然で申し訳ないのだが電話で話すようなことではない話がしたいので会えないかと言われて、自宅を教えた。

そこで少し驚いたような間があったのはその時には気づかなかった。
が、普通はそういう時は喫茶店なりファミレスなりを指定するものだろうと、ずいぶんあとに村田から呆れたように指摘をされて知る。

そう、そんな”当たり前”がわからないほどには義勇は人付き合いがなかったのだ。

ずいぶんと驚いたであろうに、それでも錆兎はそんな常識を指摘することなく義勇のアパートを訪ねて来てくれる。

そして自宅の一室で言われた第一声が

──突然で押しかけてすまない。実は俺は冨岡の事が好きなんだ。
だった。

それから義勇の気持ちも聞かれて付き合うとなったあとに、言われたことがある。


──あとで知って誤解すると傷つくと思うから先に言っておく。

と、ずっと好きだった相手に告白されてふわふわした気持ちでいるところに真剣な顔で言われたので、義勇はそれだけで怖くなってしまった。

だって本当に好きな相手なのだ。
その相手と付き合えるなんて事になって浮かれていたら条件があって、その条件に合わなければダメとかだったら立ち直れない。

そんな義勇の緊張した表情に気付いたようだ。

錆兎はきりりと男らしい太い眉の眉尻を下げて
──そんなに緊張しないでくれ。どちらかと言うと俺の方がお伺いを立てる内容だ。
と困ったように笑う。

そんな表情もカッコよくて思わずぽぉっと見惚れていると、錆兎は
──実はな…
と話し始めた。

「まず最初に大前提だけど、俺はちゃんと義勇のことを好きだし、付き合いたいと思っているからな?
それは常に念頭に置いておいてくれ」
と前置き。

「そのうえで、今回なぜ急にここに来たかなんだが…実は昨日、宇髄と不死川と宇髄の家で飲み会があったんだ。
その席で不死川が余興で罰ゲーム付きのゲームをしようと言い出した。
まあなんというか…普段はない面子で招かれたからな。
これはもう罰ゲームと称して俺に何かさせたい事があるんだろうと思って、わざと負けてみることにしたんだ。
それで不死川から言われたのが、罰ゲームとしてお前に告白してこいということだ」

この告白は罰ゲーム…だった?
と義勇がショックを受ける間もなく、錆兎は即続ける。

「まあ俺は元々お前と親しくなりたいと思っていたし、その申し出をありがたく受け入れて告白しにきたわけなんだが…。
実はこれまではずっと、お前に近づこうとすると宇髄にさりげなくガードされてたんで、それを無理に突破して良いやら悪いやらわからずジリジリしてたのもあってな…。
今回のこれは渡りに船と言ったところで、状況が変わって止めに来られないうちに告白から付き合うところまでの既成事実を作ってしまおうと思ったんだ。
だからすまない。
時間との勝負だったのもあってムードもへったくれもない告白になってしまった。
でもこれからきちんと色々好かれるように頑張るつもりだから」

え?え?
別にこれ以上頑張ってもらわなくても、錆兎に告白してもらえたこと自体が自分的にはものすごい快挙で幸せな事なんだけど…と義勇は思うのだが、それはそれとして…

──結局不死川の嫌がらせが最終的に俺にとって幸いしたということなのか…
と、状況を脳内で整理する。

そしてそれを口にすると錆兎はにこりと
──俺は不死川本人ではないから本当のところはわからないが…
と言いつつ、義勇の意見に異論を唱えてきた。

「確かに義勇の事が嫌いで嫌がらせと言う可能性もなくはないんだが、それを宇髄が止めない時点で俺は逆に不死川はお前の事が好きなんじゃないかと思う」

「好き?俺が幸せになれるように錆兎をけしかけてくれたってこと?」

「いや。俺に罰ゲームで告白させて嫌な思いをするであろう義勇を自分が慰めて点数稼ごうとしたのかと…」

「ない。それはないな」
「何故?」
「それが罰ゲームだろうと、錆兎ほど完璧な男に告白されるなら、一生モノの想い出になるということがわからないほど不死川もバカじゃないと思う!」
「………」

義勇にしたら…というか、世間の一般常識として当たり前のことを言っただけなのだが、錆兎は一瞬目を丸くして、それから片手で顔を覆った。
豊かな宍色の髪の合間から見える耳は真っ赤で、義勇はそれを見て、こんなこと言われ慣れているであろうになぜそんなに照れるのだろうと不思議に思う。

──えっとな……

そのまま数秒ほど固まったのち、顔を覆った指の隙間から錆兎の声が漏れる。

──百歩譲って、もし俺がそのレベルの人間だったとしても……
──間違いない!錆兎に告白されて嬉しくない人間は世界に存在しない。

義勇がまたきっぱり言うと、錆兎はまた少し固まって、それでも進める。

──そうだとしても、からかいのような目的で告白されるのは、愉快なことではないだろう?

まあそうだ。
そうなのだが…

──そうだとしても、そこに不死川が何かを言ってきたからと言って不死川を好きになるとかはないと思う。

義勇はとりあえずそれでも否定しておいた。
そして語る。

「あれは18年前…初めて出会ったその日から、不死川は俺を嫌って目の敵にしている…」

そうだ。
入学式の前で並んでいた時からすでにすごい目で睨みつけられていた。
何か気に障ることをするどころか、口さえきいたことがない段階ですでにそれである。
そこから会えば殴り怒鳴りを繰り返しているだけで、いきなり愛情が育まれるはずがない。

義勇にしてみれば当たり前の認識であったが、錆兎は何か物を言いたげな目をしている。
が、飲み込んだのかどうでもよくなったのか…

「ま、不死川が好意を持っていようと敵意を持っていようと、俺と義勇の付き合いには何も関係ないからどうでもいいかっ」
という言葉からすると後者なのだろうと義勇は思った。

「ただ、悪意ならお前を傷つけることに失敗したということだし、善意ならお前の好意を得ることに失敗したということだから、どちらにしても不死川からしたら悪い結果と言う事になる。
やつはお前に八つ当たりをしてくる可能性があるが、俺はそれを全力で阻止してお前を全身全霊で守るつもりだ。
だから落ち着くまでは極力俺と一緒にいるようにしてくれ」

そう言ってくれる錆兎の言葉が嬉しい。
というか、遠慮なく錆兎と一緒に居る理由を作ってくれたことは、不死川に感謝しても良いと思う。

そう、18年間の付き合いの中で義勇は初めて不死川に感謝をしたのだった。







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