ペナルティらぶアナザーSBG_11_ぎりぎりの信頼2_宇髄視点

──俺だ。
とワンコールで出る親友に、ひゅっと緊張から息をのむ。

その宇髄の反応に錆兎は電話の向こうで淡々と
『今のお前は冷静じゃなさそうだから、適切な説明ができない気がする。
先に俺が話すから間違っている部分は指摘して、質問には端的に答えろ』
と言う。

声音はいつもよりかなり冷たいものの、言う事はいつもと同じ。
全面的に信頼されていた人間性を再審査されているといったところだろうか…。

そう理解して、
「わかった」
と宇髄が短く答えると、錆兎は始めた。

『大前提として、不死川は冨岡の事が好きなんだな?
だが、気恥ずかしさが勝って照れ隠しに暴力暴言を繰り返している。
不死川がそういう態度だから冨岡は不死川を避けているんだろう。
で、不死川はそんな状況を変えて冨岡と恋仲になりたいと画策している。
宇髄、お前はずっとそれにつきあってきたんだな?
で、今回のは俺が罰ゲームで告白して冨岡を傷つけたあとに自分がフォローを入れることで、冨岡の自分に対する株を上げようという、不死川の企みだな?
付き合いたいのは自分の側なのに関係のない第三者を使って想い人をわざわざ傷つけて自分は嫌な思いをすることなく相手を手に入れようとする不死川への俺の評価は最底辺だ。
ということで…お前は何を考えてそれに協力している?
冨岡に対する実害だけではなく、俺の社会的な評価、それにお前との交流も含めて犠牲にしたいと思うだけの理由があるのか?』

うん…わかってた。
お前はあの不死川の冨岡が傷ついても俺がフォロー入れるからという発言だけでそこまで読み取る男だよな…
と、宇髄はそんな場合ではないのだが、錆兎のあまりの洞察眼に遠い目になる。

せめてその恐ろしく広い視野の100分の1でも不死川が持ち合わせていたならば、自分はこんなピンチに陥らなかっただろうということも……

──冨岡な、あいつも幼馴染で大切なんだよ。
──…それで?
──実弥の提案を拒否ったら、あいつは別の人間に頼むっつ~から…
──……
──冨岡に忠告とか実弥の邪魔をすれば、次からは相談なしに無茶をやられかねねえ。
──…なるほど。それで俺か。

「悪い。でも実弥の計画を邪魔するという形を取らずに冨岡を傷つけないでなんとかできそうな人選が他に思い浮かばなかった」

嘘も忖度も全くない。
正直に本音だけをもらせば、電話の向こうから大きなため息が聞こえた。

──そういうことは始めに言っておけ。こちらも準備の有無で難易度が変わる。
──悪い…。本当に冨岡を傷つけない形でこなしてくれればと思っただけだったんだ…。

──宇髄、友人としての忠告だが…
と、最終的にその言葉が出てきたことで、どうやら最悪の事態は抜け出せたのを察して宇髄は脱力のあまり倒れそうになった。

そして続く言葉が

──付き合う友人は選んだ方がいい。
で、もう乾いた笑いしか出てこない。

──ああ、俺も今回はそれ本気で思ったんだけどな。
と言うと、電話の向こうで錆兎は

──それならよかった。じゃあ尊重する相手は尊重し、見限る相手は見限らせてもらうぞ。
と、どこか吹っ切れた明るい声で言った。

とりあえず違うだろうなとは思いつつも
──俺は…見限られたりしてねえよな?してたら覚悟もあるから言ってくれ。
と、これまでの人生で…それこそ受験の結果発表や就職の内定の通知よりもドキドキしながら尋ねると、

──ん?見限って欲しかったのか?
と、からかうような声音で言われて、でも宇髄の方は結構本気で

──勘弁してくれっ!
と答える。

それに錆兎は電話の向こうではっはっと笑うと、
──まあ…今後付き合っていく友人を探すなら、俺のおススメを紹介するぞ?
と言ってきた。

──おススメ?
──杏寿郎と後輩の炭治郎。二人とも暴走気質だが殴れば止まって話を聞ける。

実に錆兎らしい説明に笑うしかない。

そして
──殴る手間が要らねえ相手はいねえのかよ。
と言う言葉が出てくるくらいには少し浮上した宇髄。

それに
──これは俺のとっておきなんだが…村田?目立たないようで居ないと色々詰む空気みたいな男だ。
と錆兎はやっぱり笑って言った。

村田…確か経理課の人間だったな。
すげえ地味なのに錆兎にそこまで買われてんのかよっ
と、その言葉にその対極の派手派手を目指す宇髄としては対抗心をそそられるが、とりあえず相手を超えて相手に勝つには情報から、と、ばかりに

──あ~、そいつぁいいな。今度飯でも一緒させてくれ。
と、答えておいた。

だがそれもまずは今回の諸々の片がついてからだ。
おそらく判断が早い錆兎が動き出したなら、翌平日の月曜には決着がついているだろう。
それまでは…まあ自分にできることはない。

そう割り切った宇髄は、錆兎が早々に帰り、実弥が酔いつぶれたあとに残ったつまみと酒で一人酒盛りとしゃれこむことにした。







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