それからの流れは最悪だった。
明らかにわざと負ける錆兎。
賢い上に勘も度胸も良い男なので、本当にあからさまにわざとなのだが、それに気づかず大喜びする実弥。
と言う言葉に宇髄はイラっとしたわけなのだが、錆兎はそれには無反応で、ただ淡々と
──で?何をさせたいんだ?
と、聞いてくる。
そしてその後、実弥から罰ゲームの内容を聞いた時、さらにすぅ~っと表情が消えた。
ああ…これは軽蔑されたよな…と絶望的な気持ちになる宇髄。
錆兎は普段は声高な男だが、本気で怒ると静かになる。
それを知っているだけに、この静けさに宇髄は絶望した。
にこりと温度のない笑みを浮かべ、錆兎は言う。
静かに問う。
──それは…当然冨岡は状況は知らないということだよな?
──知ってたら罰ゲームにならねえだろォ
「そうか…一応問う。
それは俺に対する罰ゲームである前に、関係のない第三者である冨岡に迷惑をかけることになるかもしれないという認識は?」
「いいんだよ、そこはっ!
俺があとでフォロー入れて慰めてやるからよ」
「なるほど。そういうことか。
品性下劣だな。
まあいい。俺は俺の正しいと思うやり方でやらせてもらう」
それだけ言うと錆兎はすっと立ち上がった。
──あ、あのよ、錆兎……
と宇髄は慌ててその腕を掴んだが、静かに…しかし確固たる力で外される。
初めて向けられる冷ややかな目…。
それに固まる宇髄に錆兎は小さなため息とともに、
(言い訳をしたいなら、先にあの下種を酔いつぶしておけ)
とだけ言って、そのまま家を出て行った。
ギリ言い訳をさせてもらえる…そのことに宇髄は心底安堵して…安堵しすぎて生まれて初めて気を失うかと思った。
半分諦めてはいたものの、やはり一番の親友に軽蔑されて縁を切られるのは、自分で思っていたよりも堪えることだったらしい。
──なんだぁ?あいつちゃんと告白すんだろうなァ
とまったく空気も読めずに自分の目的だけを主張する実弥に
──安心しろ。あいつは義務と思えば完璧にこなす男だから
と、もう怒る気すらせずに言うと、宇髄は
──たぶん明日くらいには行動に出て月曜には結果だすだろ。黙って待っとけ。
と、さっさと酔わせるために実弥のグラスにどぼどぼと酒を注いだ。
そうして実弥を酔いつぶすまでの間、どう説明しようかと脳内をフル回転させる。
自分も怪しまれない程度に酒に口をつけるが、全く酔えないどころか味すらわからない。
もうとにかく食う暇も与えず酒を注いで注いで飲ませて飲ませて…そうしてようやく酔いつぶせたのは1時間以上あとで、とりあえず酔いつぶれて寝ている実弥を蹴ってみて、反応がないのを確認すると、宇髄は電話のためにベランダに出た。
夏場で暑いはずなのにスマホを握る手が震えている。
話して許してもらって楽になりたい。
だが許してもらえないかもしれないのが怖くて電話したくない。
そんな葛藤の中、少し悩んでそれでもまずLINEで今から電話をしても大丈夫かと確認をとったあと、宇髄はこれまで感じたことのないほど緊張をしながら錆兎の電話をタップした。
0 件のコメント :
コメントを投稿