諦めが悪い2人の人生やり直しバトル_36_友情に厚い元忍の提案

水柱屋敷は母屋と離れに分かれている。
母屋はほぼ出入り自由で、真菰の友人や錆兎が面倒をみている…あるいはみていた一部の隊士が宿代わりにしていたりする一方で、離れは水柱である錆兎や継子二人が住む他者が入れない場所である。

どのくらい入れないかと言うと、離れと母屋がつながる渡り廊下につながる扉は、離れからはすぐ開くが母屋からは細工ごとが得意な元水柱の師範に直々に伝授された真菰が作った鍵がないと開かない。

門から続く道は母屋に続き、植木の合間にある獣道のように目立たぬ細い道が母屋とつなぐ渡り廊下以外の離れへの道である。

そして…離れへと続き生い茂る木々の合間の道には、当たり前に狭霧山名物の罠の数々。
それを乗り越えて育ったきつねっこ達には別に道端の石ころほどの障害にもなりはしないが、忍者でもない限り一般人がそれを超えるのはほぼ不可能だ。

そう…忍者でもない限りは……


──真菰~ちっとお邪魔するぜ~

真菰達は食事は母屋でするが洗濯は離れである。
何故かと言うと…まあ、皆に人気のきつねっこ達の洗濯物の保護のためだ。

今日は錆兎が義勇を伴って任務先に赴いているので、一人留守番の真菰は3人分の洗濯物をまとめて干している。

錆兎と義勇の任務地は少しばかり遠いので帰宅は明日になるし、干し終わったら少し鬼殺隊女子瓦版組合部屋でも覗いて来ようかな…などと考えていると、何かが自分をめがけて飛んできた。

パシッと胸の前で受け止めてまじまじと見ると、最近できた小洒落た洋菓子屋の焼き菓子で、
──宇髄さんってさ、このあたりやっぱ嫁が居る男だよね。気遣いが出来てる
と、真菰は笑って振り向いた。
自分達以外の侵入者だが、驚く様子もない。

そしてそれに、
──おう、そうだろ?嫁達が最近好きなんだよ、その店の洋菓子。
と、離れの周りに張り巡らされた罠を壊さぬように見事超えて来た元忍が得意げに言った。

他人が入ってこないようにと罠を張り巡らせたこの場所に入って来ても、もはや文句を言われない元忍。

それどころか
──せっかくだからお茶にしよっか。話あるんでしょ?
と、全てを察したように最後の洗濯物をパンパンと手で伸ばして干した後、そう言って離れの縁側から中に入っていく真菰を追って、宇髄もきつねっこ達と自分以外は入ることのない、きつねっこ達の住処についていった。


──いまの時期に来たってことは、錆兎に聞かれたくない事?
──あ~、やっぱり真菰は察しが良いから話が早くていいわ~

錆兎は飽くまで日本茶派だが、義勇は都会育ちで姉と暮らしていたのもあって淹れてやればたしなむのもあり、常備してある可愛らしいカップと芳しい紅茶。

自分達のテリトリーにいれてやるほどには気は許しているが、飲み物の好みを聞いてやるほどには気を使うことはしない。

真菰にとってそんな関係性の相手だが、宇髄も宇髄でそれに不満はない。
嫌なら飲まないだけだし、洋菓子を持参しておいて緑茶を入れろとかけったいなこだわりを持っているわけではない。
それは真菰もわかっている。

そう、頭の回転がはやい者同士、二人きりだと色々余分な意思確認を省略して、最短で物事が進んで行くのが常だった。


──実弥のことだったりする?匡近が危ないとか?
ニコニコと可愛らしい笑顔でいきなり物騒な話をぶっこんでくる真菰に、苦笑いの宇髄。

──もうかなわねえなぁ…。まあそれも無関係ではないんだけどな。もっと大局的なことで…

──なるほど。互いに特に言及していないことについて双方打ち明けて情報共有したいってことね?
にこやかに紅茶を飲み、『美味しっ』とクッキーを齧る真菰を引きつった顔で見る宇髄。

──馬鹿は苛つくが、お前みたいな賢すぎる奴はそれはそれで怖えな
と真菰の言葉を肯定した。

──まあ…普通は打ち明けるのは言い出しっぺからよね?
──ああ、わかってる。お前さんなら問題ねえよな。……たぶん

宇髄はほんのわずかばかり考え込むように黙り込んだが、最終的に思いきるように出された紅茶を飲み干すと、よしっ!と自身に掛け声をかけて、真菰に向けて語り始めた。

「大前提として…俺がこの前お前さん達に語った話はマジだ。
少なくとも俺の中では真実で…錆兎の方が話したことについては、記憶があんのか、無意識に出て来た話なのかはわからねえ。
でももし記憶があったとしたら俺も記憶持ちなのは毎度のことだから気づいていると思うし、それでもそれをはっきり言ってこねえとしたら、用心しているんだと思う」
「用心?」
「あの時言ったろ?
義勇は一度あいつに惚れ込んでいる輩に拉致られて最終的に錆兎と二人して死んでるって。
その時のやろうは今は義勇のことよりてめえの事情で色々忙しくてそれどころじゃなくなって、この何回かの転生時はちょっかいかけてきてねえけど、それがあるから義勇にそういう意味で手を出したがる奴に対しては、あいつはすげえ用心してるんだと思う」
「…なるほどね……」

真菰は相槌を打ちつつ、少し脳内で整理をするように考えこんで言う。

「それ…実弥じゃないのよね?」
「ああ、違う。はっきり言っちまうなら人間の頃の名前は産屋敷月哉…で、鬼になって改名した名が…」
と、そこで真菰が目をまん丸くして叫ぶ。
「無惨なのっ?!
「そうそう。やっぱりわかったか。
でもその時に義勇が自死してて手に入れる手段がなくて詰んだし、なんならお館様が鬼殺隊を結成したのもそのあたりなんで、もう自分が生きるのに忙しくてそれどころじゃなくなったって感じか…。
まあ鬼殺隊がなくなるくらいまでは奴はこっちにちょっかいかける余裕はなさそうだよな」
と宇髄は苦笑。

「それでここんとこの転生はようやく少し平和だったんだ。
義勇はほら、あのツラだからな。
野郎にもモテんだけどよ。
だが、強引になんちゃらっつ~奴は他にはいなかったからな。
…もし実は記憶があってもお前さんにも言わねえってことなら、そのあたりを警戒してんだろうなぁと…。
俺は逆に情報共有してきっちり周り固めて警戒したほうが良いと思ってんだけどな。
どっちにしても…俺はこの前の話の通り、自分が名前呼びされねえことで距離を取られてんのか気にするくらいには、あいつのこと気に入っててな。
まあ別に義勇の事も嫌いじゃねえけど、義勇のダチじゃなくて、錆兎のダチなんだよ。
だからもうあいつが傷ついたり…それこそ目の前で死なれたりすんのは嫌なんだ。
そのくらいなら、ありえねえけどよしんば義勇があいつ以外のやつを選ぶ可能性が出てきたら、その相手をこっそり暗殺してもいいくらいにはな」

「うわぁ…元忍なのに気持ちが重~」
と笑いながらも、真菰は自分も錆兎だけではなく義勇もだが、二人の幸せを壊す輩がいたら、そいつが死にかけていてもこっそり見捨てるくらいはするだろうなと思う。

「重いぜ~?そりゃあ物心ついた時から割り切りついてるからな。
優先順位はきっちりしてる。
まず嫁達と耀哉様と錆兎、その次がその二人が生きるのに必要な人間で、その次が自分で、さらにその次がその他大勢。
上の順位の人間のために下の順位の奴がいくら苦しもうが命落とそうが微塵も心は痛まねえ」

「…あたしと義勇は錆兎が生きるのに必要な人間あたりかな?」
「おう。だから割と優先順位は高いし、耀哉様は平安の頃から錆兎がお気に入りであそこは鉄板仲良しだからな。
まあ、そのあたりと何かで袂を分かたない限り、全力で守ってやるぜ?」
「なるほど…。
うん、まあ錆兎がここに入れるのを禁じないくらいには信じてるみたいだし、あたしも信じてるけど……ま、いっか。
これは広まったらやりにくくなるから、宇髄さんで留めておいてね?」
「おう、それがわかってることはわかってんだろ?」
「まあね」
と、そんなやりとりのあと、真菰もカミングアウトする。

「えっとね、あたしも実弥と一緒。巻き戻ってる。
ただし…前世では早くに死んで、霊体で義勇や周りを見てたから、情報は向こうより遥かに多いよ。
で、今やってるのは…」
「不死川が巻き戻ってるって立証しようとしているのを、先回りして邪魔してるってことか?」
「ご名答!」

「なるほどなぁ。
で?奴の言っていることはどこまで本当なんだ?」
と、真菰のいう事を疑うことなくそのまま信じて聞いてくる宇髄に、真菰はにっこり
「義勇と恋仲っていう点以外はほぼ本当だね。
前世では確かに風柱になったし、無惨との最終決戦にも参加してる」
と言う。

「…”参加”…ねぇ」
とそこでそこに気づくあたりが宇髄の宇髄たるゆえんである。

「あ~、そこに気づいちゃうかぁ」
と笑う真菰。

「えっとね、前世では宇髄さんは怪我で引退してて、義勇と実弥は他に5人の柱と一緒に参戦したんだけどね、最終的に無惨との決戦まで残ったのは2人以外には3人。
で、3人は死んで、義勇は右手を失くしたけど、最後まで戦って無惨を倒したの」
「……不死川は?まさか逃げたとかじゃあねえよな?」
「うん、さすがに逃げはしなかったけど、真っ先に気絶して無惨戦終わるまで寝てた」
「うはっ」
宇髄は片手を額にあてて天井を仰ぐ。

「それで前世は無惨倒したとか言ってやがんのか、あいつは」
「ま、無惨戦まで参加はしたっていうのは嘘じゃないけど、倒したっていうのは語弊があると思う」

「なるほどな。だから替えがきくって判断で、粂野推してんのか」
「そういうことっ。
正直ね、風柱になったって言うのも、匡近と一緒に下弦を倒しに行って、あいつは鬼の術にきっちりかかって戦闘不能なところを匡近に助けられて、でも鬼に操られた子どもをかばって匡近が死んじゃったから、一緒に倒したってことで繰り上がったみたいな感じだから。
匡近が生きてたら本当に匡近が柱になってたんじゃないかなぁって思うのよね」
「あ~…それはなあ…可能性は高いよな」
「でしょっ。ってことで…今錆兎に理由は言わずに匡近を育てさせてるんだけど…」
「それは不死川も焦るわな。
まあ…腐っても兄弟弟子だし、それをどうこうしようってとこまでは行かねえとは思いてえが…人間なんざ結局てめえが可愛いっつ~やつがほとんどだからなぁ…」
「あいつは前世で義勇に暴言暴力の嵐だったくせに、今生で騙して手に入れようなんてしてるクズだから、あたしは一切信用してないよ」
「あ~そりゃあダメだな。
てめえが惚れた相手を大事にできねえやつはクソ野郎だ。
とりあえず…俺らでこの先の計画をたてつつ、とりあえず匡近の身辺をさりげなく警護だな」


宇髄がそう言った時点で、元忍と花狐の同盟が成立。
これまでは鬼殺隊女子瓦版組合つながりなためほぼ女子だけだったところに、非常に頼れる協力者が増えたことで、鱗滝さんの幸せのために弟弟子達を守るという真菰の計画は大きく前進することになった。







2 件のコメント :

  1. ますます面白くなってきて、更新してくださるのが待ち遠しいです😊

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    1. コメントありがとうございます😊
      読んで楽しんで下さる方がいるということが、続ける励みになります✨

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