「あ~嫁がいつも世話になってて、ありがとな。
このネタはたぶんそのうち嫁も書くだろうから、読んでやってくれ」
と、まず嫁の趣味の後押しをするあたりが愛妻家な宇髄である。
と、部屋の隅でグッと拳を握り締めて言う須磨。
それに
(…ばかっ!社交辞令を本気にすんじゃないよっ!)
と同じく小声で言って、須磨の後頭部をはたくまきを
そして…最後の一人雛鶴は
(二人とも、天元様のお話し中よっ。静かになさいっ)
とやはり小声で注意する。
宇髄の嫁達勢ぞろいである。
そんな3人にチラリと視線を向け小さく笑った後に、宇髄はまた集まった隊士達の方へと視線を戻した。
そして始める。
「あ~…今回な、俺も不死川にデマを話された上で協力を求められたんだわ。
なんでかっつ~と、あいつが除隊になりかけた時、更生させるために面倒をみることを引き受けた錆兎に、ちょっと気にかけてやってくれって頼まれてな。
錆兎の顔を立てて少しばかり声をかけるようにしてたら、なんか親しみを持ってるって勘違いされたらしい。
そう、勘違いだ。
そもそもが個人的に特別だと思ってれば、除隊撤回の口添えを頼まれた時に会いもせずに追い返したりはしてねえよ。
俺は派手にカッコいいから好意は持たれやすいわけなんだが、俺の方も特別な感情を持つ相手は選んでるからな。
嫁達を別にして、俺にとって特別なのは大将のお館様と隊長の錆兎だけだ」
と始まる言葉に、乙女達は、おおぉ~~と小さく歓声を漏らしながらキラキラした目を宇髄に向けた。
「で、本題だ。
何故お館様と錆兎が特別かというとだ、俺は二人とは平安時代からかれこれ900年くらいのつきあいだからだ」
と、その言葉に会場がざわめいた。
が、例によってそれを制するように真菰が咳ばらいをすると、また口を閉じて話を聞く態勢に入る。
そうして静まるのを待って、宇髄は少し懐かしむように視線をわずかばかり上に向けた。
「不死川の言う前世っつ~のは、いわゆる巻き戻りで、前世というのはちと違うと思うんだが、俺のは正真正銘、生まれ変わり、転生、前世だ。
時は平安、源の頼光の四天王が大江山の鬼を退治してから数十年ってとこか…。
俺は四天王の一角、碓井の傍流の人間で、貴族の産屋敷家の嫡男だったお館様の側近をしていた。
で、産屋敷家が四天王の家のモンを招いた宴でまだガキだった錆兎を見たのが初対面。
これがな、もうガキのくせに他と違う空気をまとっていやがって、四天王のまとめ役で筆頭家と呼ばれてた渡辺の頭領の甥っ子で、次代の筆頭の跡取りとしてそこにいた。
義勇は弓の卜部の一人息子だったんだが、これがまあ綺麗な顔してるが気の弱いガキで、四天王の孫のくせに臆病者でなさけないと酔っ払った大人達に揶揄われて半泣きになってたわけだ。
そこにな、錆兎がいきなり自分の膳を持って立ち上がって義勇の隣に行くと、大人を相手に義勇をかばってやった上で、義勇に
『俺は渡辺さびと。綱の孫だ。
今この時より俺がお前の前に立つ。
お前のこの手はお前の身を守る俺をいつか後ろから守ってくれる大切な手で、お前のよく見える目は俺に迫る危険を察知して知らせてくれる大切な目だ。
手はやけどや破片で傷つけないように、その目は雫で曇らせない様にするのが前に立つ俺の仕事だからな。
お前のところまで悪しき者をやることはしないから、お前は安心して状況を見てお前の為すべきことをしろ』
とか言いやがってな。
その時もう、義勇から恋に落ちる音がしたと思ったわ」
と、笑う宇髄の前で、乙女達は声なき悲鳴をあげながら顔を覆った。
──尊い…尊すぎて泣ける…。
──ああ、もう!ありがとうございます。ありがとうございます!本当にありがとうございます!!
と涙を流しながら宇髄を拝んでいる。
「…ってことでな、その後めでたく二人恋仲になって、お館様が錆兎を気にいってたこともあって、俺はお館様と二人の間を行き来して色々伝達する役目も仰せつかっていたから、自然と錆兎とも仲良くなってな。
まあいわゆる友人…いや、親友くらいの関係で付き合いをしていたわけだ。
で、最初の人生を全うしてこれで終わりかと思えば、また同じ時代に生まれ変わってな。
俺はずっと記憶持ちだったこともあって、いつの時代も恋仲な二人のダチとしてずっと二人を見続けてきたわけだ。
たぶん……人生10回分くらいは?
一度義勇が拉致られて、錆兎に操立てて自死したことがあってな、それくらいマジで一筋だし、その時は錆兎も義勇の遺体を取り戻した上で後追いしてるしな。
それまでは全員記憶持ちだったんだが、それ以来、2人は記憶がない時もあったみてえだが、それでもいつでも出会って気づいたら恋仲になってたんで、いまさら他の奴と恋仲にってのは、さすがにねえわっ」
乙女達は血走った目で食い入るように宇髄の話を聞くことに没頭している。
さらに宇髄はもう一声
「あとな、不死川の件で呼び方が~っつ~話がでたが、錆兎はずっと俺の事は宇髄呼びなんだよ。
これはな、俺は最初の人生から気になってて、何度目かの人生で聞いてみたわけだ。
『お前、義勇はとにかくとして、碓井や坂田の人間は皆名前で呼ぶのに俺だけ宇髄なのはなんでだ?』
って。
そしたら奴が言ったわけだ。
『碓井や坂田は大勢居るし苗字で呼べば全員返事するからな。
その点、俺が宇髄と呼ぶのはお前だけだ。
なんなら他に宇髄の家の者がいたとしても、そいつらは俺にとって”宇髄殿”であって、親しく宇髄と呼べるのはお前だけだから』
ってな。
…もう本当になんでそんなことをきくんだ?ってめちゃくちゃ不思議そうな顔をされて…。
俺の方はそれまではずっと、やっぱり一緒に大江山に行った先祖の直系じゃねえからか?って少しは気にしてたんだけどな。
でも特別だったのはあいつらじゃなくて俺だったんだってそこで知ったわけだ。
なんつ~か、人たらしなんだよな、あいつは」
なんてエピソードも追加でぶち込んで来る。
(元は錆兎が言いだしたことだけど、それをこんなに短時間に乙女達が大絶賛しそうな風に脚色してみせるとは、さすが元忍、侮れないわねっ)
…と真菰は宇髄が味方だったことに心の底から安堵した。
こうして…
──公式が最大手っ!!
を合言葉に、ますます執筆に励むようになった乙女達。
もちろん不死川のデマを粉砕しつつ、さびぎゆ布教にも熱が入る。
何故かその片隅に義勇本人がこっそり混じることがあるのはご愛敬である。
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