諦めが悪い2人の人生やり直しバトル_24_好転する日常

──義勇に勝手に近づいたら即追い出すからね。追い出されるのがどういうことかわかってるよね?

初日…これからしばらく過ごす母屋の一室に案内された時に真菰からまず言われた注意がこれだ。

勘弁しろよっ!なんのためにここに来たんだよっ!!と言いたかったが、なんのために?と言えば、お前が除隊されないためだろっとかえってくるのは目に見えているので黙り込む。

もちろんそれで追い出された結果は匡近の切腹という事もわかってはいるので、逆らえるわけもなく、頷くしかない。


いきなりこんなことを言われるのは、初対面のあの日、義勇を守るのは自分だと豪語したからだろう。
あの時もう少し言葉に気を付けるべきだった…と実弥は自分の過去の言動を後悔した。

だがそれを除けば水柱屋敷の生活は決して悪いものではなかった。

まず水柱の錆兎は一緒に居る時間が長ければ長いほど、その人柄の良さがわかってくる。
やはり良い家の人間と言うのは性格も似てくるのだろうか…前世の煉獄を思い出させた。

こいつを嫌う奴なんてそうは居ないだろう…と、いい加減ひねくれ切った実弥でも思う。

真菰も顔に似合わずキツイ女だが、小さい身体でちょこまかちょこまか家事をこなすので、力仕事などを手伝ってやると、
「ありがとう!気が利くねっ」
と返す笑顔が意外に可愛い。

実弥は自身も口が悪いしキツイ言い方をするのもされるのも慣れているので、兄弟弟子が関わらなければ真菰の事も嫌いではない。

そして義勇…。
彼に関することだけが目にすると辛い。
何しろ真菰はとにかくとして、錆兎がとても可愛がっていて傍で守ってやっていて、義勇も錆兎の傍で気を許して幸せそうに笑っているのだ。

前世では鬼が居なくなってからは笑顔も見せたが、こんな風に安堵しきった幸せそうな笑顔は見せたことがない。
言わなくても大好き、大好きと言う空気が駄々洩れている。

それを自分の方に向かせようにも真菰が居ない場での接触を禁じられているのでどうしようもない。
真菰や錆兎が居る場では、義勇の視線と関心は常に二人に向けられているのだから。

それどころか、錆兎の居ない所で任務にでるのを禁じられている実弥が実戦を離れて勘が鈍らないようにと、たまに錆兎が自身の任務に同行させてくれるのは良いが、そこまで人数も要らないということで義勇はおいて行かれることになる。
そのせいで、実弥はしばしば義勇に恨めし気に睨まれたりすることすらあるのだ。

何が悲しくて惚れた相手にそんなことで睨まれなければならないのか…。
もうその点についてはため息しか出ない。

それでも日々基礎鍛錬に励んでいるうちに筋力が付き、以前とはくらべものにならないものの、それでも風の呼吸の型をこなすための力と速さが身についてきた気がする。

大岩はまだ斬れないものの、弱い鬼なら複数体を普通に斬れる。
これは隊士1年目にしては強い方だ。

礼儀の方も、他と一緒になる任務の時はまず保護者の錆兎が
「今日はうちの者が一緒させてもらう。
そこそこ鍛えているつもりではあるが、まだ未熟なところもあると思うのでよろしく頼む」
と、自分よりも下の階級の人間であっても先に頭を下げるので、実弥も釣られて
「よろしくお願いします」
と頭を下げるのが習慣になった。

頭を下げるという事が恥というわけではないと最高位の錆兎が自身の態度で教えてくれるので、実弥もそこは素直になれる。

そうして連れ歩かれている間に、実弥を見る周りの目も随分と優しくなったと思う。

自分に何が足りなかったのかを教わって、だんだん自分の記憶にある自分に近づいてきて苛々することも減り、苛立つことが少なくなれば周りの態度も変わって来て、ずいぶんと生きやすくなってきた気がした。

思えば自分はこれまで上手くいかないのはわかっていてもどうすれば上手くいくのかがわからなくてイライラしていたのだろうと気づく。

強さが戻ってくれば、そこは前世で一度はやや丸くなるまでは生きたので、それなりに穏やかな態度が取れたし、錆兎が作った錆兎に対して好意的な人間との交友関係を通して、それなりに評価してもらえるようになった。

全てが良い方向に進んでいる。
一点だけ…義勇のことを除いたら…。









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