諦めが悪い2人の人生やり直しバトル_20_決死の依頼

──今日は水柱様にお願いがあって参りましたっ!!

先に居間に入った錆兎がゆったりと自分の座椅子に座って正面の席を勧めると、匡近はいきなり今度は居間で机をはさんだ正面で土下座をして叫んだ。

それにやっぱり戸惑う錆兎と、驚くこともなく普通に急須と湯呑を乗せた盆を手に居間に来て、
──この人…土下座が好きなんだな
と、慣れた手つきで茶を煎れながら言う義勇。

それは
──こら、義勇っ。失礼だぞ。少し黙っていろ。
と、眉をひそめて錆兎が軽くたしなめた。

しかし義勇はよくわかっていないようで
──うん?…ごめん?
と小首をかしげる。

そんな会話をしている間もゴリゴリと畳に額をすりつけている様子は、今生ではまだ出会ってもいないもう一人の弟弟子をどことなく彷彿とさせて、突き放す気がしない。

なので真菰は
「誰かと真剣な話をしようとする時は目を見てするものだよ?
とりあえず頭をあげて錆兎に向き合って話をしなさい」
と、彼をうながしてやった。

こうしてようやく頭を上げた匡近に、錆兎はホッとしたように声をかけた。

「お前とはほぼ初対面だと思うんだが、俺に頼みとは?
まずそれを聞かせてくれ」

そう言われて匡近は身を乗り出す。

そして
「実はっ!私の弟弟子の不死川実弥と言う男がおりましてっ!
水柱様にも先日大変失礼な事を申し上げましたこと、あいつに代わってお詫び申し上げますっ!」
と、また土下座しかけるので、

「謝罪は良いから。
錆兎は細かいことは気にしない男だから、話を進めてもらっていい?
この前の暴言を許してほしくてきたとかじゃないよね?」
と、真菰がそれを止める。

なんだかこの勢いとかが本当に某長男を彷彿とさせて真菰も内心苦笑いだ。
そのうち、『自分は長男なのでっ!』とかドヤ顔で言い出したらどうしようかと、そんなことを思う。

結局なんとか聞き出した用件と言うのは、不死川実弥について勝手な行動が多すぎて他から苦情が殺到して最終的に除隊させようという話が出ていて、それの撤廃のために助力が欲しいという事だった。

──ふむ……
と錆兎は事情を聞くと片手を口に当てて考え込む。

そして
──俺はかばえるほどには不死川の事を知らないんだが…何故俺の所へ?
と尋ねた。

まあそうだ。
知らないどころか、唯一の接点である先日の任務では助けたのに暴言を吐かれた関係なので、全く接点がないよりもまだ悪いんじゃないだろうか…と、真菰も不思議に思う。

すると匡近はポロリと涙を零した。

「あいつに迷惑をかけられたという隊士達、特に尻拭いに奔走することになった総指揮を受け持ってきた甲の方々からの申し出なので、それを撤廃してもらうにはそれより上の方、柱の方々にお願いするしかないと思って、他の柱の皆様のところにも足を運んだんです。
でも会って頂けない方、むしろ除隊に肯定的な方が圧倒的で、協力をお願いできそうな方が誰もいなくて…。
あいつ、つい先日水柱様に暴言吐いたらしいんで、一番望み薄だとは思ったんですけど、もう水柱様が最後なんです。
確かにあいつは馬鹿で考え無しだけど、悪い奴じゃない。
家族をみんな亡くして、刀もないのに自分の稀血で酔わせた鬼を日の光にあてて殺すなんて無茶な方法でも、鬼を退治し続けてたんです。
あのままじゃそう遠くない将来に死んでしまうと思って師範の所に連れて来て、やっと人間らしい生活を始めたところなのに除隊なんてされたら、あいつは今度こそ死んでしまいます!
俺があいつを拾ったんで、最期まで面倒をみてやりたいんですっ。
なのでもう一度だけ、機会を頂けないでしょうかっ。
もしそれであいつが迷惑をかけたなら、俺が責任を持って切腹しますっ。
それを条件にすれば、あいつも変わってくれると思うのでっ」

あ~これはだめなやつだ…と真菰は思った。
鱗滝組はこの手の話にすごく弱い。
前世でも鬼になった禰豆子が人を喰うことがあったら…で、切腹の話が出ていたし、情にもろすぎるのが鱗滝組の欠点だ。

案の定、錆兎ははあぁ~…とため息をついて、
──確か頼ろうにもお前達の師範はもう居ないんだよなぁ…
なんて呟いている。

そして、パン!と膝を打つ。

──わかったっ!俺が身元引受人になるということで、交渉しよう

あ~…やっぱり流された…と、真菰は内心頭を抱えた。

「ただし…俺は無責任に身元引受人という名を使うつもりはない。
不死川実弥の問題行動は、ひとえに自分の認識に実力が追い付いていないことにある。
だから俺が一から全て鍛え直す。
強くなれば他人に尻拭いをさせることもないだろうし、礼儀もある程度は叩き込む。
今後揉め事を起こさなくなるまではうちで修行し直しだ。
帰って不死川自身に、それに耐えなければお前も連座で切腹になるが耐えられるか、あるいは除隊するかを選ばせろ」

そう言ってから、錆兎は、それでいいな?と言わんばかりに真菰に視線を送ってきた。

良くない。ぜんっぜん良くないっ!
そうは思うが、前世での最後の弟弟子によく似た雰囲気の少年の期待に満ちた顔を絶望の淵に叩き落すことは真菰でもさすがになかなかに難しい。

もうこれは錆兎が了承してしまった時点でどうしようもない。

なので真菰は大きくため息をついて
「一つ条件追加っ!ここに居る間はあたしのいう事も厳守ねっ」
と軽く手を挙げて言う。

それに錆兎が頷いて、
「あ~、それも追加な?
真菰は立場上は俺の継子になっているが、実は俺が世話になり続けて頼りにしている姉弟子なんだ。
生活のルールとかは俺が鱗滝先生に師事した時からずっと真菰に教わってきたし、今でもそれは変わらない。
まあ…俺との関係を別にしても、不死川がここに来るなら真菰は姉弟子という立場になるからな。
目上を尊重するのは弟子の第一歩だ」
と補足した。

それにまた最後に土下座をして礼を言って帰っていく匡近。

不死川の性格からしてかなり屈辱的で受け入れがたい条件だとは思うので、断ってくれればいいなぁと秘かに思う真菰の横で、義勇はほとんど手をつけられなかった茶を片付けながら、

──なんだか…やっぱり土下座が好きな人だったよね?
と、気になる事は話の内容よりはそこだったようで、錆兎に同意を求めるようにそう言って、台所へと戻っていった。









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