そういうわけで、その後に別の任務をこなして水柱屋敷に帰ったあと、義勇には台所で食事の用意をしてもらって、その間に真菰は自分達はまだしも、とても警戒心なく育った温和で優しすぎるところのある義勇には、素行の悪い不死川を近づけるのは非常に危険だしよろしくないと、そういう方向からこんこんと諭した。
錆兎はどうして真菰がそこまで不死川を遠ざけようとするのかは理解できない様子ではあったが、信用している姉弟子に義勇にとってよろしくないと言われれば、今自分がわからないでも少しでもその可能性があるならそうしたほうがいいのだろうと納得してくれた。
義勇も大概錆兎の事を好きだが、錆兎もそれ以上に義勇のことを想っている。
修業時代とか隊士時代とかは、それでも少しでも強くならねば義勇自身も危険だということで鍛えようとしていたようだが、継子としてその身柄を管理できるようになってからは、最悪自分の傍から離さないで自分が守れれば良いと思っているようで、煩くは言わなくなった。
──刀を握るのが嫌なら、館で待っていても義勇の一人くらい俺が養っても良いぞ?
とまで言っているのだが、それには義勇自身が
──錆兎と離れるのは嫌だ。第一錆兎の後ろは世界で一番安全な場所だし一緒に居た方がいい。
と言って、その強さゆえにしばしば自身の守りがおろそかになる錆兎のために防御の腕をせっせと磨いている。
そんないつでも一緒どこでも一緒が良い2人だが、そう言う話をする時は、錆兎は
「まあ…真菰は出来ればついてきて欲しいが…。
俺は刀を振るうくらいしかできないから、頭がいい真菰の知恵はありがたい。
だけど、どうしても疲れたということなら、真菰も館で待っていても養うぞ?」
と、義勇は
「錆兎とも一緒が良いけど、真菰も一緒だともっと嬉しい。
俺の第二の姉さんだから」
と、二人して真菰についても言及してくれる。
そしてそんな弟弟子達に、
──あんた達すごく可愛い、マジ可愛い!
と、真菰がもう自分よりも大きくなった弟弟子二人を抱き寄せるまでがいつもの流れなのだ。
そんな風に兄弟弟子みんなで仲良しの鱗滝組のきつねっこの一人としては、自分達以外でも兄弟弟子が仲良しなのを見るのは好きだし微笑ましいとは思う。
思うのだが、今回、青ざめた顔で水柱屋敷に訪ねて来て、その玄関先で土下座をしているのは、あの、不死川実弥の兄弟子ということなので、好意よりも警戒心が先に立つ。
いきなり
──本日は弟弟子の不死川実弥のことで水柱様にお願いがあって参りましたっ!
と、玄関先で土下座されたので、錆兎も戸惑った様子だ。
一方で隣の義勇は通常運転で、
──そこにそうやって居られたら出入りがしにくいと思う…
と、玄関のど真ん中で土下座をしている男、粂野匡近に言う。
それにハッとしたように顔をあげて、どうしよう…と言うように玄関の土間に正座をしたまま見上げられて、錆兎は苦笑。
「義勇が失礼な事を言ってすまない。
何かはわからないが、話を聞こう」
と言ったあと、
「義勇、すまないが客人に茶を煎れてきてくれるか?
真菰は俺と一緒に話を聞いてくれ」
と、それぞれに言った後、真菰に頷いて相手を居間まで案内するようにうながす。
真菰は相手が相手だけに異議を唱えたかったが、家族だけの時は真菰が姉弟子でも対外的には錆兎が柱でこの家の主だ。
少なくとも錆兎は大切な決定をする時は必ず真菰に意見を聞いてくるので、何かあればその時に正そうと思いつつ、
──…こっちへ…
と、奥へと向かう錆兎にちらりと視線を向けたあと、匡近にそう言って居間へと向かった。
0 件のコメント :
コメントを投稿