諦めが悪い2人の人生やり直しバトル_17_兄弟弟子の絆

鱗滝さんの偉大さを知らしめるために、まずはその一番弟子とも言える錆兎を押し上げる計画は非常に順調に進んでいた。

最終選別後、百舞子は宣言通り隊士ではなく隠の衣装係を目指し、仁美は最終選別での錆兎がいかにカッコよかったかとかを描き綴る。

選別早々に皆に呼びかける声が心強くも頼もしかったこと。
まるで暗闇に差し込む陽の光のように皆の心に希望を与えたその存在。
そんな凛々しく優しく強い錆兎が、その弟弟子の可愛らしい義勇に優しい目を向けつつ常にその身を守るように後ろに置いているその描写は腐女子のみならず、義勇を自分に置き換えて妄想する夢女子の心もきっちり鷲掴み。

強いだけではなく他者に対する思いやりがあることとか、的確な指示を出せることとか、その他もろもろから垣間見える優れた人格は、ひとえに師範である元水柱である鱗滝さんの教育で、それを一番受け継いだためだと、そこは譲れない一点もきちんと強調した文を物語風に書いて作った薄い冊子はかなりの出来栄えだ。

それを同期娘3人と真菰は暇さえあれば書き写し、何冊かの同じ冊子を作り、射子が任務の合間に口頭で広めて興味を持った女性隊士にそれを配る。

実に地道な活動の結果、女性隊士を中心に同志が増えて行き、そのうち何人かは読むだけではなく情報を共有したり自分で記事を書いたりと、啓もう活動に積極的に加わり始めた。

そうこうしているうちに、新たに錆兎や義勇の似顔絵を描き始めるものまで出てきて、ほとんど人気役者のような扱いに…。
それは本人には知らせぬようにと水面下でのことではあるのだが。

もちろん鱗滝先生の弟子の中で一番強いと先生が太鼓判を押すだけあって、ただの女性に人気の隊士で終わるはずもなく、錆兎は淡々と多くの鬼を斬り続け、そのうちたまたま遭遇した下弦の鬼を斬り捨てたことで、史上最速で柱となる。

義勇は義勇で、他を守るためにしばしば自分の守りがおろそかになる錆兎を守るためにと、前世でも編み出した防御特化の技である凪を編み出し、目立たないが着々と実力を伸ばしていた。

そこで錆兎がすごいなと思うのは、自分が柱になって義勇と真菰を継子として常に傍における状態になった時点で、義勇がいるからと防御をあっさり捨てた点である。

いやいや、もし義勇が居なくなったら?…と真菰もさすがに思うわけなのだが、錆兎は当たり前に
「義勇は俺より前には出す気はないから何かあれば死ぬのは俺からだし、それでも俺が義勇を守り切れずに先に死なせたら、もうそれは切腹ものだから、それ以上自分の身を守っても仕方ないだろう?」
ときた。

そこには義勇が自分から離れて行くという選択肢は存在しないらしい。
まあ錆兎が柱になる前の一般隊士の頃に任務で離れる期間がわずかばかりあったことで、一緒に居られるようになってからは二度と離れるのは嫌だとどこに行くにもテチテチと可愛らしいが不思議な足音をたてながら錆兎について回る義勇を見ていたら、そんな日が来るとは確かに思えないが…。

そんな風に二人とも互いにべったりなのは確かだが、だからと言って真菰だけ孤立するかと言うともちろんそうではない。

錆兎は何か大きな判断が必要な時は必ず義勇ではなく真菰を頼って意見を聞いてくるし、義勇に至っては毎日風呂に入る前、入って髪を乾かした後、そして朝起きた時には、──真菰、髪梳かして?──と、実に可愛らしい笑顔で櫛を持ってやってくる。

それは義勇がまだ姉が生きていた頃に毎日やってもらっていた習慣らしく、それだけは錆兎ではなく、年上の女性の真菰にやってもらいたいらしい。

義勇のぴょんぴょん跳ねてはいるが綺麗な黒髪を櫛で丁寧に梳かすことでさらさらつやつやにしていく作業はなかなか楽しい。

錆兎はいつもそれを──真菰、そこ代われ!!──と言わんばかりに凝視しているが、これは真菰の特権である。
ふふんと鼻歌を歌ったりしつつ、この役目だけは絶対に譲らない。

こんな風に、まあはっきり言ってしまえば兄弟弟子3人、任務も含めて一緒に居られる環境なだけに、他に比べるとかなり仲良しで距離が近いと思う。

だから真菰も師範への想いを別にしても、兄弟弟子の絆と言うものには結構弱い。
前世の炭治郎の時だって、もし真菰も生きてたら絶対に切腹組に加わっていたと思う。
すでに本当の親兄弟を全て亡くしているのもあって、そのくらいには師匠も兄弟弟子とかも大切なのだ。

自分がそう思うのだから、他もそうだと言われれば納得する。
……が、今回の来客は、正直追い返したい。



数日程前のことである。
任務の帰り道、新人が多く入っている任務が近くで行われているということで、錆兎が様子を見に行こうと提案した。
助け手が必要ならば新人の任務くらいならそんなに時間もかからず軽くこなせるだろうし…と言う。

まあ悪くはないと思った。
そんなに大変じゃない事ならば、善行は積んでおくのは悪くはない。
そして感謝されれば、全ては鱗滝師範の教育の賜物ですと言っておけばいい。

…と、そのはずだったのだが…。

任務的には行って良かったと思う。
普通の弱い鬼が複数居て、近隣の村々を襲ったりするということでの山狩りの任務。

範囲が広くて見つけるのは大変だが、鬼自体は弱い。
そんな前情報からとにかく手の空いている新人を片っ端から集めたらしい。

弱い鬼ならまあなんとかなるだろう…そう思って居たのだが、そこに1体だけ人間に化けたりする異能の鬼が居たとのことで、真菰達が着いた時にはちょうど仲間の一人が食われたと逃げ出してきた新人がこの任務で唯一の高い階級甲の総指揮に泣きついてきたところだった。

「そうか、じゃあ助けを求めて場所を知らせてくれる生存者がいるうちに倒さねばならないな」
と、そんな話を聞いたら錆兎が動かないはずもなく、その程度の鬼のために柱を使うなんて恐れ多い、自分が行きますと慌てる甲の隊士に

「総指揮はここを離れたらダメだろう?
お前は皆が帰る目印だ。
なあに、見つからなかったとしても夜明けまで。
隊士達の命と引き換えにということを考えたら長い時間ではない。
その時まで見つからねば、本部に連絡をして異能用にもう少し経験のある隊士を寄こしてもらおう」
と言うと、もう返事も聞かずに飛び出して行く。

そこで
「錆兎は考えるより動きたい人間だから、そんなに気にしなくても大丈夫。
とりあえずもし戻ってくる子がいたら、異能が倒れたと分かるまではこの場で待機させてね」
と、動揺する総指揮にそう言って笑顔を見せると、真菰も錆兎の後を追った。

森の中は真っ暗だが、錆兎の白い羽織と宍色の髪は目立つのでわずかばかりの光があれば追うのも難しくはない。
真菰は義勇とだけははぐれないように手を繋いで森を駆け抜ける。

そんな中、ほんの少しして、そう遠くもない場所で悲鳴が上がった。
それを聞いて錆兎が走る。
真菰と義勇もそれを追う。

そうして真菰達が追い付く前に、錆兎の
──水の呼吸、壱ノ型:水面斬り!!
という声がした。

思ったより早く終わったな…と、おそらくそれで解決したのであろう問題に真菰は安堵したが。事態は別の意味でこじれることになった。






0 件のコメント :

コメントを投稿