諦めが悪い2人の人生やり直しバトル_1_プロローグ

なんちゃらの一念、岩をも通す…と言う言葉がある。
これはそんな一念を持つがゆえに成仏できなかった人間達の往生際の悪い悪戦苦闘の物語である。




往生際の悪い人間の一人は少女だった。

本来は鬼退治の組織、鬼殺隊に入って活躍をしようと思って居た子どもである。
鬼に家族を殺されて育て手と言われる師匠の元で修行を積んだ少女。
初めはただただ鬼憎しだったのが、少しずつ剣士を目指す理由が変化してくる。

鱗滝左近次。
彼女を引き取ってくれた師範の人柄に惹かれ、彼の役に立ちたいと思ってきたのだ。

しかし皮肉なことにその想いが彼女の命を摘み取る遠因となった。
最終選別の最中、師範に恨みを持つその場にそぐわない強さの鬼に出会い、師範に対する暴言を吐かれたことで冷静さを失った彼女は、倒せないまでも逃げ切る事はできたはずなのに、命を落としてしまう。

それでも少女は成仏しきれなかった。
そして同じように師範に対する暴言で平静さを失って、こちらはおそらく少女とは違い、その鬼を倒すこともできる力がありながら刀の扱いを誤って刀を折ってしまい亡くなった弟弟子の錆兎と共に、さらに続く弟弟子達に寄り添い、導き、最終的に霊体としてではあるが、鬼の頭領が倒されるまで見守り続けた。


生き残った弟弟子は二人。

1人は錆兎の片割れとも言える親友で、元々は少し泣き虫ではあるが愛らしく素直な弟気質の少年だった。
その少年、義勇は組織の最高位である柱にまで昇りつめた。

しかし彼は錆兎が亡くなったことで感情を失い、喜怒哀楽がほぼなくなったことで色々誤解を受けることが増え、人間関係に苦労し続けたようである。

そして鬼の居ない世になって、ようやく少しだけ感情が戻って、稀に笑顔も見せるようになっていたが、鬼を倒すために人の限界を超えて力を発揮したため、24歳と言う若さで寿命を迎えた。

義勇が亡くなる時に少女は錆兎と共に二人して迎えに行ったのだが、霊体となって少年の姿に戻った義勇は、嬉しそうに錆兎に抱き着いて再会を喜び、錆兎は錆兎で義勇が己の腕の中に戻ってきたことに満足して、二人して無事成仏したようである。

そんな幸せそうな二人を見送って、真菰はいよいよ一人になった。


その後、最後の弟子の炭治郎も義勇と同じくやはり24歳の若さで最期の時を迎える。
その時も真菰は傍に居た。

炭治郎の死の床には妹の禰豆子や友人の善逸も居たが、穏やか過ぎる顔を隠した天狗の面の下で涙する師範の姿しか真菰の目には映っていない。

鬼の居ない世になったのは良いが、自分の愛弟子達は皆亡くなり、唯一残された二人の弟子もその戦いの後遺症で短い寿命を終えて、年を重ねた自分だけが生き残っていることに、師範はおそらく優しい心を痛めているだろう。

誰よりも師範を見つめ続けた真菰にはわかる。
鬼が居ない世になって世間的にはめでたしめでたしだが、師範の幸せを考えると全くめでたくなんてない。

──鬼が居なくなろうと、世界が救われようと、鱗滝さんが幸せじゃない結末なんてあたしは絶対に認めないっ!!

彼女は強く強くそう思った。
そして…その瞬間、彼女の視界が真っ白になった。


………
………
……え?

眩しさに思わず目をつぶって、そして目を開けた瞬間、彼女の目の前に広がったのは真っ二つに割れた大きな岩。

──お~!やったなっ、真菰っ!!
と、言う、どこかで聞いた声と言葉。

──真菰はもう13だから、このまま次回の選別に申し込むか…
と言う声は、愛しの師範のもので……

混乱して無言で二人を見ていると、
──真菰、おめでとう!岩を斬れないの俺一人になっちゃったけど…
と、その時に居た最後の一人、義勇が、まだ声変わり前の少年の声で言う。

そう、何故か少女、真菰の意識は、彼女が鱗滝師範が弟子を最終選別に送り出す条件にしている大岩をようやく斬れたあの日に戻っていたのだった。









2 件のコメント :

  1. 新しいお話しをありがとうございます😊
    これからの展開が楽しみです(^ ^)

    返信削除
    返信
    1. こちらこそ読んでいただいてありがとうございます😊

      削除