彼女が彼に恋した時_13_前編

──鱗滝先輩って、本当に冨岡先輩のこと好きなんですね

義勇は今日も貞子と朝のお茶会中だ。
最近恒例となったそれは、誰にも内緒の秘密のお茶会。

部活で時間が取られるので少しでもと部活の朝練で登校が早い錆兎に合せて早い時間に登校している義勇が皆が登校してくるまで暇なのを知った貞子が
──私も行きがけに末の弟を保育園に送っていく関係で登校が早くて朝暇なんですよ
と言って、一緒にお茶をしながら時間を潰しませんか?と持ち掛けてきたのでほぼ毎日続いている。

正直小等部時代に友人と言える人間がほぼ居なくて、現在も普通におしゃべりをできるのが甘露寺さんくらいの義勇には、とても楽しい時間だ。

いつも朝の暇な時間に口にするためにコンビニに寄るから良かったら…と義勇にも新製品とかのグミやキャンディをくれて、主に共通の知人である鱗滝君の話題に興じるのが常だ。

恋バナと言う意味では甘露寺さんともできるのだけれど、彼女と居る時は自分だけが話しすぎないよう、伊黒君の話も聞くように心がけないといけないが、貞子は鱗滝君の話だけを聞いてくれるどころか、時に『鱗滝先輩は~なんですか?』と、義勇がしゃべったことをさらに掘り下げて聞き返してくれたりもするので、とても楽しい。

こんなに気軽に楽しい気持ちをそのままにおしゃべりできるのは、蔦子姉さんを除けば貞子だけだと思う。

義勇が朝の時間に貞子とお茶をしているのは班の皆も知っていて、その中で伊黒君は何度か
「あいつは信用ならない人間だ。気をつけろっ。
お前は曲がりなりにも甘露寺の友人だから、おかしなことになると困る」
と注意喚起をしてきたが、彼は甘露寺さんに近づく人間は皆嫌いで、そのついでに甘露寺さんの友人である義勇にも他に人が近づかないようにして欲しいだけなんだろうなと思い、

「貞子ちゃんは良い子だよ?
少なくとも一緒にいるのは朝の時間だけで蜜璃ちゃんと被ったりはしないから大丈夫」
と返しつつ流していた。

そんな伊黒君に影響されたのか村田君も
「う~ん…君子危うきに近寄らずって言葉もあるからねぇ。
避ける必要はないけど適度な距離感を保った方がいいかもね」
などと言う。
人嫌いの伊黒君はとにかくとして誰とでもうまく付き合う村田君のその言葉は意外だった。

それでも義勇は
「危うきって言うのは貞子ちゃんに失礼だよ。
彼女だって好きで不死川の妹なわけじゃないんだからっ。
不死川が迷惑な男だとしても貞子ちゃんを差別はダメだよ」
と、当の不死川の目の前でも言っていたので、不死川が非常に微妙な表情をしていたのは秘かにそれを見ていた同級生達の失笑を誘う。

鱗滝君と煉獄君はたいてい部活で朝に戻ってくるのはぎりぎりで、こちらは二人とも
──本人達が楽しくて不死川兄が一緒じゃなければ良いんじゃないか?
というスタンスだ。

でもなぜかそこでたまに顔を出す宇髄君が
「あ~…でもなぁ…自分に近い人間があんま冨岡と仲が良くなると、不死川も勘違いするかもだし、ちと距離が近すぎじゃね?」
と、伊黒君や村田君に賛同してくるのは謎である。

しかしまあ、最近本当に意外なことに宇髄君は村田君と仲が良いみたいでたまに二人でしゃべったりしているようなので、村田君の考えに引きずられているのかもしれない。

そんな風にあまり義勇が貞子と居るのにいい顔をしない3人の意見に関しては完全スルーだった義勇だが、のちにそれが間違いだったのだと思い知ることになることになるのだった。







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