彼女が彼に恋した時_11_幕間6

とりあえず事情を調べてもらうことと共に、亜優が自分を陥れるような女であるということを周りに認識させることは出来そうだ。

城山君は…亜優に騙されたということなのか、彼も共犯なのか…。
どちらにしても、もう要らない。

亜優が何を言ったとしてもはなから自分を疑ってかかって暴言を吐くような奴だったのだと思うと、あんなに長い期間好きだったのに一気に冷めた。

それに比べて鱗滝先輩がなんと素敵なことか。
本当に命がけで貞子を助けてくれたのだ。

そして彼女に対して優しいということも冨岡先輩に対する態度で見て取れる。
鱗滝先輩の彼女になって、あんな風に大切にされたい。
いや、されたいじゃなく、されてみせるっ!

もちろん今現在冨岡先輩と付き合っているという時点で、なかなかに険しい道のりだ。
絶対に鱗滝先輩を狙っていると気づかれてはならない。

ひどく憔悴して相談に乗って欲しいのだということを前面に出して、正義感が強く弱者に優しそうな鱗滝先輩の同情を買い、そこから放っておけないと思わせて最終的に…という方向に持って行くのが正解だと思う。

だからそれまでは冨岡先輩を遠ざけようとかいう素振りはみせない。
単に影響力の強い鱗滝先輩に助けて欲しいだけ…ということを強調しよう。


以前なら彼女の居る相手から略奪なんて思いも寄らなかった。
でもそんな行動を取らなくても今回のようなことは起こるのだ。

真面目に他人に優しくと心がけていたって、貞子が困った時に他人は助けてはくれないし、陥れられたところで信じてももらえない。
それなら本当に好き勝手に責められても仕方ないことをしまくって責められた方がマシだ。

しかもそれも上手に立ち回ってバレなければ、自分を虐げて来た子達に復讐できるだけじゃなく、皆がうらやむような幸せが手に入れられるのだ。

やらかしてバレても、やらかさないで陥れられ責められる今と何も変わらないのだから、メリットはあってもデメリットなんて何もない。

それこそ鱗滝先輩が貞子の彼氏になってくれれば、冨岡先輩はフリーになるのだから長兄が付き合える可能性だって出てくるだろう。

この時点でもう迷惑をかけられすぎていて長兄も次兄も昔のように大好きかというと微妙なところだが、弟妹にはまだそれなりの情が残っているので、上二人がそれで落ち着いてくれれば、下の子達がからかわれたり虐げられることがなくなるからいいか…と思う。

これだけ自分が不幸だと、他人の幸せを願える人間なんて居ない。
とりあえず他人に優しくなるには、まず自分の幸せを維持すること。

それが疲弊しきった貞子が出した結論だった。






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