彼女が彼に恋した時_11_後編

──本当はね、少し心配だったの…不死川の妹さんがあんま鱗滝君に接触したら嫌だなって…

有無を言わさず現場を離れて向かったスタバでお目当てのフラペチーノを飲みながら義勇がそう切り出すと、鱗滝君は少し困ったように笑った。

「あ~…うん。
人道的に放置も出来ないが、メンタルが落ちている時に助けられたりすると、しばしばその相手に惹かれたりすることはあるのはわかっているから。
たぶん不死川の妹も俺の服を掴んだのはそんな理由の可能性はあるとは思ってた。
だから敢えて宇髄と村田に振ってきたんだ」

ああ、なるほど。
あの時、すがってくる相手を軽くかわすような、鱗滝君らしからぬ態度はそういう事だったのか…と、義勇は今更ながら知った。


「まあ…理由はわからないが、不死川の妹も今すごく精神的に参っているから気の迷いだと思うし、なんならあのあとは俺より女子慣れしていてイケメンで金持ちでスマートな宇髄が対応するんだろうから、そういう気持ちは宇髄に行くんじゃないか?」

「…宇髄君より錆兎の方がいいって思う女子も多いよ」

「それはないな。
自慢じゃないが俺は義勇と付き合うまで年齢イコール彼女居ない歴を更新中だったし、告白なんてされたこともない」

自信満々に言う鱗滝君。
だが、いつもなら鱗滝君のいう事は100%正しいと思う義勇でも、それは間違いだという事は知っている。

鱗滝君がモテないから女子が告白しないわけじゃない。
単に硬派で恋愛に興味がなさそうなオーラを出しているので、打ち明けにくいだけだ。

まあそれでも不死川の妹の安全を確保してすぐ、色々大変なのであろう彼女をすぐ宇髄君に任せて、泣いているだけの義勇を心配して駆け寄って来てくれたあたりで、鱗滝君の方の気持ちは心配はないのだろうなと思う。

ただ、自殺未遂を起こしたような相手をあまり拒絶するのは良い印象を持たれないだろうし、拒絶しないで良いように彼女の方には適度な距離を取って欲しいなとは思っている。

そもそも同級生で好きな相手が居ると言っていたのはどこにいったのだろうか…。
もしかして上手く告白できないとかで男子の意見が聞きたいとかだったんだろうか…
でもそれなら車の前に飛び出そうなんてことにはならないだろうし、振られてしまったか、つきあっているが何かが上手くいかないとかか…

そういうことなら、鱗滝君よりは宇髄君に相談するのが正しい。
今度彼女と話す機会があったなら、恋愛相談なら鱗滝君よりも宇髄君の方が良いと忠告しよう。
うん、そうしよう。

もし前回話していた好きな同級生とうまくいきたいとか言う話だったなら、自分だけじゃなく甘露寺さんにも声をかけて全力で応援する気は満々だ。

出来れば鱗滝君を好きでと言うよりは、鱗滝君に相談したかっただけと思いたい…そんな願望を胸に義勇は色々と考えていたのだが、物事と言うのは厄介な方向にしか転がらない…特に不死川家に関係することに関しては。

そう、もうあの家は本当に鬼門だ!と義勇が一家総出で海外にでも移住してくれないかと思う程度には…






2 件のコメント :

  1. 海外に移住というよりも、世界の果て迄飛んでけ〜って思います😠

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    1. まあ世界の果てで苦労しすぎて日本に戻って来られても困りますし💦
      この義勇は自分に実害がない遠くで幸せにやっている分にはまあ良いかと言うおっとりさんなので😅

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