彼女が彼に恋した時_11_前編

あの不死川の妹との話し合い以来、鱗滝君は学校側や小等部の後輩たちに働きかけて、どうやら不死川の弟妹達への周りの待遇もほぼ元に戻ったらしい。

もちろんそうして鱗滝君が動いてくれたのだからと、宇髄君もきっちり有言実行。
最近は隣のクラスの女子や、なんなら義勇のクラスの女子達も一緒に義勇の周りで過ごしているので、不死川が大変近づきにくい状況になっている。

不死川はそれでも近づこうとしてくる時もあるが、その時はその女子達が
「冨岡ちゃんに嫌がられてんだから、やめときなよ~。
しつこい男は嫌われるよ?」
とか、
「ストーカー、まじやばっ!」
とか、色々言ってきて、不死川がそれに言い返しているうちに距離が取れたり、休み時間が終わったりで、周りが騒々しくはなったが、それ以外の実害はないので平和と言えば平和に過ごせるようになった。

それだけじゃなく、朝とか鱗滝君や煉獄君が居ない時には、少し暇な義勇に宇髄君や煉獄君と距離を詰めたい女子達がその友人である鱗滝君の彼女の座をゲットした義勇に色々聞くために話しかけてくるので、これまで班の5人以外とはほぼ必要最低限の会話しかしたことのなかった義勇は初めて同級生女子との雑談というものを経験するようにもなっていた。

そうして話すようになってくると、男子のことだけではなくて、勉強のことを聞いてくる子なども出てきて、話すことが多岐にわたってくると、宇髄君の依頼だからとかを超えて、『かなり変わっているけど勉強とかも聞けるし結構いい子』と言ってくれる女子も増えて来た。

最近、そんな感じで大勢の人に囲まれていると、一人ぼっちだった小等部時代、静かだったけど気まずくて不安で寂しかったなぁとしみじみ思う。

あの頃は攻撃的な態度を取ってくるのは不死川とその悪友みたいなやんちゃな男子達だけだったが、クラスのほとんどがそんな感じだったとしたら、ずいぶんと心細かっただろうし、利害の一致で協力したにすぎなかったのだが、それとは別に感情的な部分で不死川の下の弟妹達がどうやら平和な日常を取り戻せたことに、心から良かったと思えた。

不死川自身に関しても、蔦子姉さんを悪く言った事に関しては万死に値するとは思うが、来年あたりもし義勇とクラスが離れて、それによって接点が無くなることがあったとしたら、不幸になってしまえとまでは思わないので、義勇の目のつかないところで甘露寺さんとかに迷惑をかけることもせず、何か別の幸せを見つけて過ごしてくれればいいと思っている。

そんな風に義勇は基本的には温かい家庭で優しい家族に愛されて幸せに育ったお子さんだったこともあり、根っこは優しい楽天家なので、嫌なことがあってもそれが完全に取り除かれるなら流すことができる稀有な娘だ。

優しい彼氏、大好きな親友、そしてクラスメート達との仲が良好で、嫌な事を言ったりしたりする不死川も近づいてこれない状況が揃った現状、自分がとても幸せな分、過去についての恨みを引きずるよりは、これからの他人の幸せまで願える。

ああ、学校は楽しい。幸せだ。
と、学校生活が始まって以来、初めてくらいに楽しい日々が続いていたのだが、それは悲しいことにそう長くは続かない。

それからそう長い時間が経たないうちに、義勇は一番恐れていた状況に巻き込まれることになるのだった。






2 件のコメント :

  1. 義勇さん、何に巻き込まれるのでしょうか? とっても不安です‼️

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    1. 某S家関連です💦💦
      まあ…展開としてはお約束な諸々ですね😅

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