彼女が彼に恋した時_9_幕間_I Love妹!2

その他は義勇の小学校についてはあまり良い思い出はない。

それどころか小学校5年生のとある日、とうとう義勇が泣きながら学校に行きたくないと言い出したのだ。

あれほど頑張って登校していた義勇が限界になるほどひどいいじめが続いているのだろう。
もうこれは一刻の猶予もないと蔦子が訴えれば、登校拒否までになったことでさすがに両親も危機感を覚えて学校に電話をして、校長との面談の約束を取り付けた。

両親は両親だけでと言うのだが、蔦子は断固として自分も行くと主張。
小学校入学以来、毎日義勇に話を聞き続けたのは自分なのだから、自分が一番彼女の気持ちをわかっているのだと言って、同行にこぎつけた。

そうしてその日の午後、母は自宅で義勇と残って、父と蔦子で学校へ。
はっきり言って校長もクズだった。

まず一通り怪我をさせたり物品を壊されたりしたことの極々普通の軽い(…と蔦子には思えた)謝罪があったあと、とりあえずなんとか出来ないのかと言う冨岡家側に

「いや、学校も彼には非常に迷惑をしているんですよ。
問題行動ばかり起こすし注意も聞かない。
他の子ども達もみんな彼の事は近づきたくないし関わりたくないと思ってるんです。
たぶん…知的か精神かに何かあるんだと思うんですが…特別な学校に行って欲しいと思っても親が行かせると決めないと学校側では何もできないんですよ」
と言う。

「…いや、私立なんだから退学にすることは可能でしょう?」
と当たり前だがそう突っ込みを入れる冨岡父だが、それに校長は
「今、そこまですると社会が色々うるさいんですよ。
それに彼の親は色々と噂のある建設会社の社長で、長男を退学にしたとかになれば、メンツをつぶされたと何をしてくるかわかりませんからね。
子ども達に危害を加えられたら大変です」

と、その言い方に蔦子はカチンときて
「今、実際に妹は危害を加えられているんですけど?」
と思わず口をはさんだ。挟まずにはいられなかった。

そんな危険な家の危険な子に目をつけられた義勇はどうなるんだ。
他の子どもの安全のための生贄になれと言うのかっ!
と、そこまで言ったところで、父に止めに入られる。

もちろん父とてそれを潔しとして止めたわけではなく、単に自分が引き継ぐつもりでそうしたのだ。

そして改めて校長に言う。
「それで?その悪童を学校は止められないし放置するので、娘の安全を計りたければ娘の方を転校させろと言うのが学校の方針ということで宜しいでしょうか?」

非常に淡々と言う父が、しかし非常に怒っていることは蔦子も感じた。
その言葉は正論だと思う。
だがそういう言い方に校長の方はムッとしたようだ。

「学校側も努力はしています。
ただ、警察沙汰くらいのことが起きているわけではない状態で児童を退学にすることは現実問題難しく、児童間のやり取りについては教師の目の届かないところで行なわれることが多いため、全てを把握することは不可能に近い。
それでも教師は目についたら注意をして、道徳の時間などで暴力暴言についてはしないように指導はしていますし、今後もします。
それ以上の何かを求められても実際にどうしようもないので、もしそれでも不十分だと感じられるようなら、わが校としては大変残念ですが、中等部に上がるタイミングで他の学校を受験ということもご検討に入れられたらよろしいのではと思いますが」
などととんでもない返答が返って来て、父も蔦子も大激怒で帰宅した。

これはもう今すぐにでも転校をさせた方がいい。
母を含めた家族会議ではそう決定したのだが、その方向で進めていると、何故か親戚にまで広まったらしく、あんな名門校を途中で辞めるなんて、義勇の方に何か問題があったんじゃないかと思われかねないと親戚一同大反対。

義勇の経歴に傷がつくかもしれないと思うと転校の強行も迷うところで、成績がいいので中学の段階で他の中学を受験して他の中学に行けば…ということで家族内では落ち着いていたのだが、当の義勇が自分よりも家族に対する親戚の目というものを気にしてしまったらしく、中等部になれば外部受験組が入って来て、同学年の人数も1.5倍になるからと、そのまま中等部にあがることを選択してしまった。

そんな経緯があるので、蔦子的には義勇の中等部進級には非常に神経をとがらせていた。
なので、特に人数の制限もなかったのもあって、蔦子も両親と共に中等部の入学式に出席することにしたのである。







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