彼女が彼に恋した時_9_前編

──返事はどうしたァ~!

鱗滝君から煉獄君の弟と不死川の弟の間に起った諸々を聞いた翌々日、義勇がいつものように伊黒君と甘露寺さんと共に登校していると、不死川が『おはよー』と挨拶してきた。

色々驚いた。
これまで不死川が暴言以外に義勇に声をかけてくるなんてほぼ記憶にないし、たぶん挨拶なんてされたのは初めてじゃないだろうか…。

どう反応して良いのかわからず固まると、不死川に冒頭のように言われて、確かに挨拶をされても返さないのは失礼か…と思って
──…お、…おはよ…
とおそるおそる返す。

すると不死川はニヤっと笑って甘露寺さんと反対側の義勇の隣に並んで歩き始めたので、義勇は思わず甘露寺さんに抱き着いてしまった。

それに
「なんだぁ!!その態度はっ!!」
と声を荒げる不死川。

だが今までと違って義勇は一人ではない。

「義勇ちゃんに近づかないでっ!」
と甘露寺さんが義勇を守るように自分と伊黒君との間に入れてくれ、普通なら甘露寺さんとの間を邪魔する相手には容赦ない伊黒君が今回は
「不死川、宇髄から聞いたが、貴様は弟の事を穏便に済ませるのと引き換えに冨岡にちょっかいをかけないと約束したんじゃなかったのか?
それともまだ冨岡をきっかけに甘露寺に近づこうと企んでいるのかっ?!」
と、相変わらず誤解は解けていないようではあるが、義勇を拒絶することなく、甘露寺さんのついでに守ってくれる。

そんな伊黒君の言葉に、不死川は、
「ちょっかいなんてかけてねえだろォ。
クラスメートなら挨拶なんて普通だし、俺だって同じ学校なんだから通う道だって同じだから仕方ねえよなァ?」
と、ハッと馬鹿にしたように笑うと言った。

それに冷ややかな視線と共に足を止める伊黒君。
当然甘露寺さんと義勇も足を止める。

そして同じく足を止める不死川に
「どうした、不死川。
俺は少しやることができたから足を止めたし、俺と一緒に登校している甘露寺と冨岡も足を止めたがお前は関係ないだろう?
さっさと行ったらどうだ?」
と言うが、不死川は

「あ~、俺もちと足を止めたくなっただけだァ。
それとも何か?俺が歩くか歩かないかまでお前が管理する権利があんのかァ?」
とうそぶく。

それでまたもめるのかと戦々恐々とした義勇だが、伊黒君は
「…勝手にしろ」
と淡々と言ったと思ったら、おもむろにスマホを取り出して何か打っている。

てっきり不死川を先に行かせるために足を止めたのかと思ったのだが、そうではないらしい。

そうして伊黒君が何かを打ち終わったようでスマホをポケットにしまって待つ事2分ほど。

──し~な~ず~が~わあぁぁ~~!!!!
と後方からものすごい勢いで宇髄君が走り寄ってきて、不死川の腕をつかむ。

それを確認すると、伊黒君は
「甘露寺、冨岡、行こう」
と、義勇達を学校の方へと促しつつ歩き始めた。


そうして学校までの道々で、義勇は立場がかなり悪く退学もあり得た不死川の弟の処遇について宇髄君に相談された鱗滝君が、不死川が義勇にこれ以上ちょっかいをかけて来ないことを条件に煉獄家との間に入って交渉してくれたことを伊黒君の口からきいた。

「え?義勇ちゃん、知らなかったの?」
と甘露寺さんもどうやら知っていたらしく驚いていたところを見ると、仲間内では知られていた話らしい。

それどころか、教室内でも不死川が近づこうとしてきたところに、他のクラスの女子達が
「不死川、いい加減にしなよ。冨岡さん、迷惑してるよ」
と間に入ってくれた。

どうして?と聞くと彼女達は
「え~。宇髄君に言われたから~。
そりゃあね、もし自分が宇髄君の彼女になれたとして、不死川みたいに粘着されたら超うっとおしいしね~」
と言う。

なるほど。
そこは鱗滝君と宇髄君の間での契約のようなもので、宇髄君はかなり細やかに動いてくれているようだ。

鱗滝君もカッコよくて狙ってた女子はかなりいたが、宇髄君も女子にすごくモテる男子なので、少なくとも現状フリーの彼の彼女の座を虎視眈々と狙う女子からすれば、宇髄君の心証をよくするのは最重要事項らしい。

イケメン、モテ男万歳だ。







2 件のコメント :

  1. うずてんの苦労が…( ;∀;)天丼100杯食べられても、さねみんのせいで胃炎になっちゃいそう😿

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    1. 自分自身の事は何でも卒なくこなせるのに、面倒見の良さから周りに振り回されるうずてんが最近マイブームなのです(*ノωノ)

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