昼休み…鱗滝君は本当に卒が無くて、先生に揉め事の仲裁をするのでと許可を取って会議室を借りてくれて、そこに朝の8名がそれぞれ弁当を持って集合した。
「とりあえず現場に居た第三者…宇髄に状況を聞くのが先だな。
他は先に昼食を摂っていてくれ。
宇髄の話に異議がある場合でもいったんは宇髄の話を全部聞き終わってからということで頼む。
時間が限られているからな。効率的に行こう」
と、全員を見回して言う。
「確かに全員がくっちゃべってたら昼抜きになるしな。
俺は状況説明したら飯にさせてもらうわ」
と、宇髄君がそれを了承して、他は特に異議を申し立てることもなくそれぞれ弁当を広げた。
そこで鱗滝君が
「本題に入る前に…」
とちらりと煉獄君に視線を向けて
「今日は美味い!とか叫びながらじゃなく静かに食えよ?」
と注意を促し、煉獄君が
「むぅ…まあ今日だけは仕方ないなっ」
と言うのにみんなが笑って、少し場の空気が和んだところで、
「じゃ、宇髄頼む」
と宇髄君に場を譲った。
「じゃ、まあそういうことで。
若干俺の感想も入るけどな」
と前置きをして、まずは宇髄君が話し始めた。
「とりあえず…前提として、俺は昨日の伊黒たちとの話し合いの結果とか、冨岡にも来てもらったこと、その時に鱗滝も居たことなんかを電話で不死川に報告してる。
で、俺が登校してきた時になんだか不死川達のクラスがうるさかったんで、昨日の事もあるし見に行ったんだ。
そしたら伊黒と不死川が怒鳴り合ってる最中だった。
内容は伊黒が不死川が甘露寺目当てだったとか叫んでて、不死川がそれを否定してる、そんな感じだったな。
事情を村田に聞いたら、不死川が朝いきなり甘露寺に話をしたいって言い出して、腕をつかんで連れ出そうとして、伊黒がそれにキレたって感じか。
で、肝心の甘露寺と冨岡は村田が鱗滝と煉獄を呼びに行かせてたってことだった。
で、仕方ねえから仲裁に入ることにしてまず不死川に落ち着くように言って、不死川が大人しくなったら今度は伊黒に声かけたら、こっちは不死川が実は甘露寺を好きで接触を持つために相談って形をとったんだと大激怒。
それ聞いた不死川のまたキレ始めた時に鱗滝達が来て今回の仲裁に入ったってとこだ。
俺が知ってんのはこれだけ。
不死川の事情の詳細はどこまで話してもOKかわかんねえから、本人に聞いてくれ」
と、そこまで話すと、宇髄君はもう自分の話は終了とばかりに昼食のパンにかじりつく。
そこで鱗滝君は少し悩んで、それから結局不死川に視線を向けた。
「不死川、話を整理するために少し踏み入った事まで聞くが、プライバシーの問題もあるし答えたくない時は答えたくないという意思表示をしてくれ」
「おう」
まずというやりとりから始まるあたり、義勇はやっぱりいつものように『さすが鱗滝君!』とその気遣いに感心する。
そんな風に鱗滝君にキラキラした目を向ける義勇を、甘露寺さんだけではなく伊黒君まで温かい目で見ているあたりに、村田君が目を丸くしていた。
そんな風に3人が視線を向けるので、鱗滝君もちらりと義勇の方を見て、目線が合うとニコッと笑ってくれる。
もうその笑顔プライスレス。
嬉しい、幸せだ…と思うと義勇も笑顔がこぼれ出た。
まあでも他の3人とは違って鱗滝君は今回の諸々の進行役なので、すぐ不死川に意識を戻す。
「ということで、不死川。
今朝、甘露寺さんと話がしたいと誘い出していたのは、別に彼女に告白したいとか言い寄りたいとかではないよな?」
ととりあえず伊黒の怒りの発端になっている事案についてストレートに触れる鱗滝君。
それに不死川は躊躇なく…というより、若干ホッとしたように
「当たり前だろォ」
と返した。
それに対して伊黒君からは
『信用ならん…』
と小さな声が漏れるが、それは全員いったんスルーする…はずだったのだが、最近、甘露寺さんと仲が良い事で伊黒君とも関係が良好な義勇は、
『蜜璃ちゃん…可愛いもんね。私には暴言暴力の嵐の不死川でも可愛いと思う子にはしないのかも…』
と、その伊黒君の不安に寄り添って小声で返す。
『そうだろう?冨岡、お前は賢いな。
さすが甘露寺の親友だ』
と、唯一自分の反応を肯定する義勇に、伊黒君の好感度は爆上がりだ。
一方で”甘露寺の親友”と言われて義勇も舞い上がる。
2人の間にただようほわほわとした和やかな空気。
義勇はとにかくとして、伊黒からそんな空気が漂っていることに全員驚きだ。
『やっぱり…あれじゃないのかな。
普段なら私の機嫌なんか気にしないで嫌な事しかしない不死川も、今は私、蜜璃ちゃんのし、親友だからっ、私が怒ったままだと蜜璃ちゃんに嫌われちゃうからとか?』
『なるほどっ!冨岡、お前意外に賢いなっ!
さすが甘露寺が選んだ友人だけあるっ!!』
本人達は二人で小声で話しているだけなのだが、もう全員が話すのをやめてそちらの会話に注目している。
「…で?そういうこと…なのか?」
と、若干呆れたような目で不死川に問う鱗滝君に、ぶんぶんと思い切り首を横に振る不死川。
あまりに自分的な事実とかけ離れた認識に何かがぷちっとキレたらしい。
「ちげえよっ!!てめえら話聞けえェっ!!!」
とついに立ち上がってそう叫んだ。
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