彼女が彼に恋した時_5_中編

マックから5分ほど駅の方に戻ったクレープ店。
ちょうど学校帰りの学生が多い時間帯で、義勇達が着いた時には数人並んでいた。

そこで鱗滝君はメニューの写真を撮ると、義勇を連れて座席の方へ。

そして義勇を座らせて、
「冨岡さん、席とっておいてくれ。
俺が買ってくるから、何にする?」
とさきほどのメニューの写真を見せてくれる。

その手際の良さに、これまであまり友人づきあいをしたことがなかった義勇は、ああ、人気者にもなると、こういうことも慣れてるんだなぁと感心しながら礼を言い、イチゴの乗ったカスタードのクレープを頼んだ。

そうして数分後…

甘い物が好きだというのは本当だったらしい。
列に並んでクレープを買い終えた鱗滝君は、義勇の苺クレープを右手に、左手にはクリームたっぷりのアイスまで乗ったチョコバナナクレープを持って戻ってきた、

「お待たせ」
となんだか嬉しそうに言って、義勇に苺のクレープを差し出す鱗滝君。

義勇が礼を言ってそれを受け取りつつ財布を出して値段を聞くと、義勇の分だけ教えてくれるので、義勇は
「今日はお礼だから出させて?」
と言う。

しかし彼は少し考え込むと、
「ありがとう。でも一緒に来てもらえただけで十分だから」
と、言ったが、

「でも…」
と義勇が難色を見せると、それじゃあ!とさっきより50円だけ多い金額を言った。

それに義勇が小首をかしげると、鱗滝君は
「俺はむしろ冨岡さんのおかげでここに来られたからお礼をしたいくらいなんだが、せっかくだからアイスの分だけありがたくおごられておく。
それ以上出してもらうと、今後俺から誘いにくくなってしまうから」
と笑顔で説明してくれる。

一瞬…一瞬、手にしたクレープを落としそうになってしまった。
50円なんてもうどうでもいい。
それより今鱗滝君はなんて言った?

『今後俺から誘いにくくなってしまうから』??!!
え?え??ええっ?!!!

──また誘ってくれるの?!!!
思わず前のめりになって聞く義勇に鱗滝君は少しびっくりした顔をして、それから
──冨岡さんが嫌じゃなければ?俺はまだ行きたい店いっぱいあって…
と頷く。

──い、嫌じゃないっ!ぜんっぜん嫌じゃないっ!!
と、義勇はぶんぶん首を横に振った。

嫌なわけがない。
鱗滝君に誘われて嫌だなんて思う女子がいるわけがない。
いや、女子だけじゃなく男子だって鱗滝君に誘われたら嬉しいはずだ。

──良かった。
と、ほわっと笑う鱗滝君。

わりとキリリとした顔立ちなのに、チョコバナナクレープをかじりながらそうやって見せる笑顔はなんだか可愛らしい。

最初は凛々しくてカッコよい鱗滝君に惹かれた義勇だが、今また、そんな彼のどこか可愛らしい部分を知って、ますます彼に惹かれていったのだった。








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