2025年2月28日金曜日 kmt 生贄sbg

生贄の祈り_ver.SBG_31_逃走

…え？

驚くべき速さで走り去る少年。

ついさっきまで打ち解けていたように思ったのに何故？？

と、炭治郎は唖然とそれを見送って、次の瞬間ハッとする。

まずい！逃げられたっ！！つかまえなくてはっ！！！

そう気づいた時には少年は遥か遠くまで逃げてしまっている。

弱々しい感じなのに逃げ脚だけは早い。

まるで野生のウサギのようだ…と驚き半分、呆れ半分、

「ま、待ってくれっ！！！」

と、それを追って駆けだす炭治郎。

しかし当然相手は止まらない。

やがて側道から合流する衛兵。

「いたぞーーー！！！」

と叫んでピ～～！！！と呼び笛を鳴らす事で、さらに怯えさせているように思う。

「そういうやり方は怯えさせる！！」

と炭治郎が叫ぶものの、笛の音でわらわらと集まって来た衛兵たちは

「こっちだーー！！！」

「捕まえろーー！！！」

と、口々に叫んで追い詰めていく。

もう収拾が付かない。

こうして走って走って走った先には西の塔。

城の東西南北にそびえ立つ見晴らし台の一つだ。

その塔の中に飛び込んだ少年を追って塔に殺到する衛兵たち。

「待てっ！！そこでストップだっ！！！」

と、同じく笛を聞いて駆けつけた錆兎の制止の声もすでに大勢の叫び声に紛れて届かない。

「陛下っ！すまないっ！！一度は見つけて普通に会話してたんだが……」

と、その姿を見つけて駆け寄った炭治郎の頭をポンと軽く撫で、

「ああ、話は後だ。先にお姫さんを保護してやらんと」

と、錆兎は衛兵を押しのけて塔の階段をかけあがった。

炭治郎もその後に続く。

「追い詰めたぞ～！！！」

と上方で声。

「愚か者っ！！追い詰めるんじゃないっ！！！」

と叫びながら焦ったように駆けあがる錆兎。

どうやら塔のてっぺんの見晴らし台まで逃げたらしい少年は海側の柵に追い詰められてひゅうひゅうと苦しそうに呼吸をしながら震えている。

その見晴らし台に錆兎と炭治郎が辿りつくのと、衛兵たちの

「捕まえろっ！！」

という叫び声。

それに心底怯えた目で少年が柵を飛び越えたのはほぼ同時だった。

「馬鹿っ！！やめろおぉぉーーー！！！！」

ドン！と前にいる衛兵を突き飛ばして錆兎が柵に走る。

ふわりと宙に浮く小さな身体。

白い寝間着がひらひらと風に吹かれて舞う。

伸ばした錆兎の手はすんでの所でその細い腕には届かず空を切り、はるか下方の波間へ向かって落ちていく少年を追って、止める間もなく錆兎も柵から身を投げ出して、一瞬のちに二つの水しぶきがあがる。

「陛下あああーーーー！！！！」

と叫ぶ衛兵。

炭治郎は柵から下を見下ろして、すぐに反転。

「医者を手配しておいてくださいっ！！！」

と叫びながら、塔の階段を今度は下に向かって全速力で駆けおりた。

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