それはまるでお伽噺のような光景だった。
小さな薔薇の家。
周りには不思議な事にキラキラとした光が舞っている。
長い睫毛の先には透明な涙の粒。
それが光に反射してキラキラと光っていた。
それはとても綺麗で、しかし繊細な光景で、土足で踏み入るような真似をしてはいけない気がして、炭治郎はしばしその場にたたずむ。
炭治郎自身も少年と言って良い年齢なわけだが、少年は少年でも彼は、亡国となってしまった自国を再興すべく、ここに来て以来ずっと、水獅子王自らの手で鍛えられた少年だ。
今目の前にいる未成熟な危うさをもった相手とは違い、日々剣を持つ手は固く大きく、どこまでも武骨である。
自国に戻れないというところは同じ境遇と言って良いが、その他は対極のように見える。
自分がすぐにこの国に馴染めたように彼もすぐ馴染むだろうと思っていたのだが、もっと親身にきづかってやるべきだった…と元々が長子なこともあり、心の底から長男気質な炭治郎は猛省した。
……すまなかった………
そう呟いた炭治郎の言葉は、当然眠っている少年には届かない。
そうしてどのくらいの時間そうして立ちすくんでいたのだろうか…。
目の前でくしゅん、と小さなくしゃみが聞こえて、炭治郎はハッと我に返った。
そうだ、相手は病人なのだから、早急に連れ帰って温かい部屋で休ませねばならない。
そう思ってその小さな家に近づいて狭い入口の前でしゃがみこんだ時、人の気配を感じて目覚めたのだろうか…
少年がビクッと身をすくめて目を開けると、声にならない悲鳴をあげた。
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