錆兎さんの通信簿_11_初めての抵抗

俺は自分で言うのもなんだが平和主義者だ。
喧嘩をするくらいなら少しくらいなら我慢してしまえば良いという性格である。
だから喧嘩なんて本当にしたことがなかったんだけど、そんな俺でも我慢できないことが起こったんだ。


「うろこだき~、お前ほんっとにあいかわらず辛気臭えなぁ…」
その日も不死川君は相変わらずいじわるな言葉と共に近づいてくる。

俺もそんな彼に少し慣れてしまって、
「おはよう、不死川君」
と挨拶だけはして、あとは流すことにしていた。

でも構われないのはそれはそれで腹がたつらしい。

不死川君は諦めずに女々しいとかオカマとか俺に対しての悪口を繰り返す。
そして悔しかったら言い返してみろとか言ってくるんだけど、俺にしてみたら悔しいよりも面倒くさいという気持ちが強くて、黙って教科書とかの整理をしていた。

次の授業の教科書を机の上に出した後、錆兎さんに教わって自分で名前を書いたノートを出す。
そうしたらそのノートを不死川君が取り上げてしまった。

「不死川君、返してよ」
と俺が立ち上がると、不死川君はなんだか嬉しそうに
「や~なこったぁ。お前んち金持ちなんだろ?また買えばいいじゃん!」
とノートをヒラヒラと俺に取られないように振りまわす。

「やめてよっ!せっかく錆兎さんが用意してくれたノートなんだからっ!」
と言いながら俺がノートに手を伸ばすと、不死川君はすごく意地悪な顔で
「とうちゃんのこと錆兎さんって呼ぶなんて変な家!お前も父ちゃんも変だよなァ」
と言った。

その言葉で俺の中の何かがキレた。

「錆兎さんは変じゃないっ!!謝ってよっ!!」
そう叫びながらなんかすごく気持ちが高ぶって、気づけば泣いていた。

普段は本当に小さな声の俺が大きな声を出したものだから、クラスメートが集まって来て、
「さねみサイテ~!!」
「返しなさいよ、馬鹿っ!!」
と、強い女の子達が不死川君の後頭部をどついて、俺のノートを取り返してくれる。

俺はしゃくりをあげてて、そんな彼女達にお礼を言うことも出来ず、渡されたノートを抱きしめた。

そんな風にちょっとした騒ぎになって、誰かが担任の先生を呼んできたみたいだ。

そして駆け付けてきた先生が
「どうしたの?!」
と聞くのに、みんなが口を揃えて
「実弥君が義勇君のノートをとりましたぁ~!」
「ひどい悪口とかも言ったの!」
「いつも大人しい子にいじわるばかりしてるの、なんとかしてくださ~い!」
と先生に訴える。

それを聞いて、先生は困ったようにはぁ~と大きくため息をつくと、
「不死川君、みんなが言ってることは本当かな?」
と聞いた。

すると不死川君は怒った顔で
「うるせえっ!うぜえっ!!」
と女の子達を殴ろうとして先生に止められ、教室を飛び出していく。

俺はやっぱり泣いてるままで女の子達に慰められていて、男子は先生が不死川君を追って行ってしまったので、席を離れておしゃべりを始めた。

そのあと不死川君は先生に連れられて教室に戻ってきたけど、いつもと違って教室内に誰かしら先生がいて見張ってくれていたので、ずっとむすっとつまらなさそうな顔で席についていて、一日が終わった。












2 件のコメント :

  1. 「お前んち金持ち~」発言に、さねみんの家は貧乏人の子沢山❓とついツッコミたくなりました^言^;💦

    返信削除
    返信
    1. いや、そんな感じのイメージじゃないですか?😅💦

      削除