錆兎さんの通信簿_10_不死川君の話

錆兎さんがよく小学校に顔をだしてくれたおかげもあって、俺の小学生生活のスタートは順調だったと思う。

先生も優しい女の先生で、俺が錆兎さんの子どもだからか、たまに顔を合わせるとPTAの宇髄さんが頭を撫でてくれたりもした。

大人達がそんな感じなので、周りも
「義勇の父ちゃんすごいカッコいいよな」
とか、そんなことから話が始まって、なんだかおしゃべりできる子とかも出来た。

錆兎さんから友達を遊びに連れて来ても良いと言われていたから、学校が終わってから友達が遊びに来て、錆兎さんの立派なビルの、お友達を招くように用意された立派な部屋でみんなで遊んだりして、なんだか幼稚園時代が嘘みたいに友達と過ごすことが増えた。

全てが嘘みたいに順調…のように見えたが、一つだけ。
クラスで俺の事が嫌いならしい子が居て、その子に色々言って来られるのだけが、当時の俺の悩みだった。

その子の名前は不死川実弥。
俺だけにではなく、皆に対してちょっと乱暴な子だった。


そんな不死川君と初めて話したのは入学式の次の日。

真菰さんが綺麗な字で名前を書いてくれた教科書やノートをランドセルからいったん机の中に移していたら、いきなり

「うろこだきって…男?」
と聞いてきたのだ。

俺は一瞬なにを聞かれているかわからなくて、目をちょっとぱちくりして、それから言葉の通りのことなんだろうか…と思って
「うん。男だよ?」
と答えたら、
「ふ~ん…、なまっちろい顔してるから、女かと思った」
とふいっと顔をそらして言うと、そのまま自分の席にもどって行った。

彼はこの地域の保育園から来たらしく、同じ保育園だったらしい女の子たちが、
「気にしないでいいよ、ぎゆう君。
さねみ君はね、みんなにいじわるでいやなこと言う子だから」
と慰めてくれる。

それに不死川君が
「うっせえっ!!クソ女っ!!」
と拳を振り上げてきて、女の子達が反論して…みたいな感じで、大騒ぎをしてて、俺はびっくりして固まってしまった。

結局その時は先生が来て、女の子たちが
「さねみ君がぎゆう君にいじわる言って注意したらぶとうとしてきました~!」
と言いつけて、不死川君は先生に怒られていた。

俺は姉さんによく似ていると言われていたから、そういう意味では女の子みたいな顔をしていたんだろうし、大人にもよく、
「女の子みたいに可愛い顔してるわね」
と言われていたから、女の子と間違われることにはそれほど抵抗はなかったんだけど、不死川君はいっつも怒鳴ってて、誰かしらと喧嘩をしているから少し苦手だった。

なのに不死川君はなぜかよく俺に話しかけに来る。
だいたいはなんだか怒っているような口調で、俺を馬鹿にするようなことを言ってくるんだけど、喧嘩をするのも嫌だし困ってしまった。

でも黙ってたら黙ってたで
「聞いてんのかよっ!なんで黙ってるんだっ!!」
と怒るので
「どう答えて良いかわからなくて…」
というと、今度は
「馬鹿にしてんのかよっ!」
と怒る。

そのあたりでたいていはクラスの他の子が間に入ってかばってくれて、なんとなく終わる感じだ。

理想としてはもちろんお友達に好かれることだが、みんな好きと思う子もいれば嫌いと思う子もいる。
だから不死川君が俺のことを嫌いだと思うことは仕方ないんだけど、嫌いなら嫌いで放っておいてくれないかな…と俺はいつも思っていた。

だって不死川君だって嫌いな相手に構ったって楽しくはないだろうし、それがお互いのためだと思うのだけれど…








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