生贄の祈り_ver.SBG_18_部屋と着替え

「着替えはどうされますか?
手伝いが必要なら俺がお手伝いさせて頂きますし、ご自身での方が良いということなら俺は退室しておきます」
と言われて、義勇は自分で…と答える。

自国では何にしろ誰かが手伝ってくれるなどという経験がない。
なので手伝うと言われても困ってしまう。

もちろんそこまでの事情を口にはしないが、少年は義勇の返答に
「そうですか。
では俺はいったん失礼します。
何かありましたら遠慮なく呼び鈴を鳴らして呼んで下さいね」
と非常に穏やかで優しい声音でそう言うと部屋を出て行った。

パタンとドアが閉まると義勇は室内を見回した。

最初に入った時も思ったが、改めてこうして見回してみれば、義勇が今まで育って来た自国の小さな部屋よりは遥かに広く、調度品もそこから出た事がほぼない義勇からすれば見たこともないほど立派だ。

それでも…ここは義勇の行く先ではない。
少年の話から察するに、水獅子王と同様に余裕があって、余裕がある分、他者にも優しいのであろう炎獅子王が今回の襲撃について耳に挟んで、気の毒な小国の王子である義勇の救出を依頼。
その依頼を無事終わらせて義勇をいったん水の国に連れ帰って、そこから炎獅子を通していったん自国の森の国へ送るか、そのまま嵐の国に送るかを話し合うのだろう。

どちらも嫌だ…とは思うものの、善意で保護してくれた両獅子王にこれ以上手を煩わせたり失礼があったりしてはならないというのは、さすがに思う。

次に拝謁する機会が出来たなら、今度こそ今回の非礼を詫びてきちんと挨拶の向上を述べねば……

そう思いながら、馬に揺られていた間に降って来た雨に濡れた衣服を脱ぐ。
これだってびしょぬれというほどにならずに済んだのは、自分は当たり前に濡れても王が自分のマントを脱いで義勇を頭から包んで少しでも濡れないようにと気遣ってくれたからだ。

ああ…それすら今思えばありえない。
そこはまず王の身を少しでも濡らさないようにと丁重に辞退するところだった。

国から先に送った荷物はすでに回収済みで荷解きがされた状態で置いてあるので、その中から今回大国である嵐の国に送られるからと新しくあつらえられた、これまで身に付けた事もないような上質な生地で作られた普段着らしき服を身につけ、一旦は今まで腰かけた事もないほどふかふかの立派なソファに腰をかけてみる。
が、雨に濡れたせいかひどく寒けがしたので、少しでも暖をと思い、居間と続き部屋になっている寝室へと移動し、驚くほど大きく立派な天蓋つきのベッドへと潜り込んだ。

上質の毛布は本来なら温かく寒さから身を守ってくれるはずなのだが、何故か寒気がおさまらない。
大きなベッドに埋もれるように横たわりながら、義勇は頭から毛布を被って震えていた。
歯の根が合わず寒すぎて心臓がドキドキする。
こんな暖かい場所でありえないと思うものの、このまま自分は凍死するんじゃないだろうか…と思った。









4 件のコメント :

  1. 再開お待ちしておりました(* ´ ▽ ` *)...そして誤変換報告です「天街付→「天蓋付き」かと思いますのでご確認ください_(._.)_ペコリ

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    1. 早速のご報告ありがとうございます。
      修正しました😅

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  2. 再開ありがとうございます😊
    更新されるのをずっとお待ちしていました😍
    これからの展開が楽しみです。
    義勇さん、何も心配しなくて大丈夫だからね❤️

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    1. ありがとうございます。義さんはちょっぴり後ろ向きな感じが可愛いですよね💕
      でもちょっと今回でこのお話は少しお休みして、しばらくは書き貯めている分が多い話から流していきます💦💦

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