こうして錆兎と義勇の…というか、それにしがみつく百舞子と引きずられる村田の4人の進路はほぼ決定した。
実に模範的な高校生活だ。
もちろん高校と言うのは勉強だけではない。
二学期は行事も目白押しだし、それとは別に個人的にも色々ある。
ある日のこと…
──村田も百舞子も出来れば待っていてもらって構わないか?
帰りのホームルームの前に残り二人にそう声をかける錆兎。
普段から4人で帰っているのだが、錆兎が義勇は自分が居なければ絶対に帰る事はないので待っているのが確定というのもあり、声をかけるのは二人にというわけである。
──うん、いいよ。村田も大丈夫っ!何か用?手伝えることある?
と、それに即答する百舞子に
──え?俺の人権は?
と当たり前に巻き込み宣言をする百舞子に苦笑する村田。
そして
──錆兎、俺は?俺には?
と、自分自身を指さして主張する義勇には
──お前は俺とずっと一緒だから、一人で帰ることはないだろう?
と言う錆兎。
──うん、そうだね。
と、その錆兎の言葉に義勇はやっぱりあっさり納得して頷いた。
ということで、全員の意思表示…──約一名については若干強引に…だが──が取れたところで、一緒に残ると言うことに関しては全く異論をはさまなかった百舞子が、それでも理由は気になるらしい。
「で?なんで?」
と端的に聞いてくる。
それに錆兎はちょっと考え込んで、
「ん~…呼び出し?
何かは聞いてないし、誰かは聞かないでくれ。
一応相手のプライバシーの問題もあるだろうから」
と、少し気まずげに視線をそらした。
あ~、なるほど!とそれで察する一同。
成績が学年一位で運動神経も良く、顔も体格も良いとくれば、普通ならそういうことも少なからずあるだろう。
だが、錆兎は義勇と共に幼い頃からモデルをやっていて、今では芸能活動もしているということもあるので無理だろうということで、そういうお誘いもあまりない。
それでもたまに我こそは!というつわものも居るので、今回もそれなのだろう。
「お疲れ様だね~。まあ長引きそうなら村田が待ってるからって言えばいいよ」
と、そこで百舞子に当たり前に名前を出される村田。
実際は自分が…というよりは義勇がと言う方が正しいし世間も納得するだろうに…と思いながらも、そこはそういう扱いも慣れているので、あいまいに笑うことで流す。
そんな友人二人をよそに、一人かなり不安そうな顔をする義勇だが、当然その視線に気づいている錆兎が
「まあ…俺は当分今の生活を変えるつもりはないし、そうすると余分な要素を追加する時間はないしな」
と、呼び出しの理由には言及はしないが、何かの誘いがあってもシャットすると言外に告げると、ようやくホッとした様子で
「うん。そうだよね。
じゃあ百舞子たちと待ってるから」
と、小さく笑みを浮かべて頷いた。
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