通常なら王自ら動くなどとんでもないことだが、水や炎の国では王自身が国一番の猛者で、先陣を切って兵を鼓舞するなども珍しい事ではない。
どちらにしても二人とも同じく国一番の猛者であった祖父王や父王の元、一流の師範からかなりガチな武術の指導を受けて育っているので、国内でも1,2位を争う剣の腕の持ち主である。
だから今回のようなことがあっても家臣達もそのあたりは心配する事もなく、逆にその絶対的守護者である王が不在になる城の方をしっかりと守る準備に余念がない。
「今回は森の人質を狙って賊が動くのを想定しての出撃だ。
襲撃前ならそのまま護衛に混じって並走し保護。
襲撃後なら襲撃者を追う」
こうして集まると説明がなくとも全員駿馬を走らせる王に続く。
非常時用の部隊だけあり、そのあたりは速やかだ。
説明は馬上が当たり前。
錆兎が馬を走らせながら指示をするとそこで初めて全員が了解し、あとはひたすらに馬を走らせる。
馬は訓練された駿馬で、丁度城から放射線状に8つの方向150kmの距離に砦。
そこで一旦2時間の仮眠後、馬を取り換えまた急ぐ。
それで一日におおよそ300キロ弱、馬車と徒歩の行列のおよそ9倍ほどのスピードで進む事を可能にしている。
一騎当千と言われる人材と共に、これが最も強く最も早いと稲妻隊が称賛される秘訣だ。
こうして1日半馬で飛ばし続けてついた国境沿い。
遠くに争う声と剣戟が聞こえる。
すでに渦中のようだ。
時間がない。
「とりあえず…人質確保が最優先で。
…とはいえ、まあ森の国の第四王子13歳としか情報がないしな。
それらしき少年を確保出来たか確保にソロじゃ無理なようなら笛を吹け。
散開っ!!」
王が馬を降りてスッと手を伸ばして最低限の命令だけを告げると、6人はそれぞれ散って行く。
1人で多人数を相手に出来ないような輩は1人としていない。
ただ人質を文字通り人質として盾にされた時のみ、鳥笛を吹くようにとの指示だ。
こうして全員が散ると錆兎自身も敵…もとい、敵に襲撃を受けているのであろう人質の姿を探して、人の気配のする森の木々の間へと身を翻していった。
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