捕獲作戦_その後_最後の事件2

杏寿郎はすでに義勇をガードする体制に入っているし、村田は心得たように脳筋コンビの荷物を預かっている。

しかし彼らの予測とは違って、標的はなんと宇髄だったらしい。


──宇髄…宇髄ぃ!なんでだよっ!寿美は関係ねえだろうがぁ!!
と叫ぶ声で皆それを悟る。

そう、用件は宇髄に対してだったようなのは理解したが、言っていることは全くわからない。
しかし目の前の不死川はどこか目が据わっていて正気ではないような気がしたので、宇髄と直接のやりとりは避けた方が良いと判断。

「久しいな、不死川。
寿美…と言うのは妹か?
何があったんだ?」
とまず錆兎が宇髄をかばうように一歩前に出てそう声をかけた。

不死川の手にキラリと光る刃物を見つけて、宇髄がそれを止めかけるが、その宇髄を
(…大丈夫だ。錆兎に任せろ)
と杏寿郎が小声で言って腕を掴んで止める。

一方の不死川は
「…鱗滝…てめえも宇髄の仲間かァ?」
と睨んでくるが、錆兎はいつもの淡々とした調子で
「なんのことだ?
俺は今日は宇髄からお前が宇髄を避けたまま退社したことについて何か知らないかと相談を受けていたんだが?」
と答えると、全く揺らぎのないその様子に少し落ち着いたらしい。
少し表情から棘が抜けた。
そして言う。

「…妹の寿美が…今日の帰りに車にはねられかけたんだぁ…」
と言う不死川の言葉とこの行動の関係性は一見意味不明だが、義勇以外の4人はなんとなく察した。

「そうか…それは大変だったな。
轢かれそうに…ということは一応回避はできたのか?
怪我は?」

興奮した不死川を落ち着かせるべく穏やかに言う錆兎。
不死川の方もいまだ錆兎に対する信頼は厚いらしい。
怒りの顔が消えて泣きそうな顔になる。

「ああ。一応青信号無視で突っ込んできた車の方が急ブレーキをかけて、寿美は驚いて転んだだけですんだんだけどなァ…
怪我は…まあジーパン履いてたから手の平をすったくれえだ」

「そうか。ひどいことにならないで良かったな。
女の子に残るような傷が出来なくて本当に良かった」
と、錆兎のこの言葉でさらにだいぶに落ち着いてきた。
そこで錆兎は一歩掘り下げる。

「ところで…それが何故宇髄のせいなんだ?
会社もあるし車を運転していたのが宇髄とかではないんだろう?」
とそう言うと、不死川の顔にまた怒りの表情が戻ってきた。

「車を運転してた奴は誰だか知らねえが、企みやがったのは宇髄なんだよ!
そいつは俺が冨岡に暴力振るってたのを知ってるからなァ!
それを恨みに思って企んでやがるんだよォ!!」
と、その言葉に、呆れたため息をつく一同。

「お前なぁ!何を根拠に言ってやがんだっ!!」
と、ようやく直接口にされた疑惑に宇髄が一歩前に踏み出しかけるのを、錆兎からのアイコンタクトで杏寿郎が止める。

そして自分は怒鳴られたことでカっとなりかける不死川に向き合って、錆兎は穏やかに問いただす。

「お前の言い分は宇髄が誰かに依頼してお前の妹を車で轢かせようとした…という認識で良いのか?」
「…おう…」
錆兎には声を荒げずに答える不死川。

「そうか…。そう思った根拠は?
宇髄が義勇に対するお前の暴力について知っていたのは今に始まったことじゃなく、十数年にも及ぶ期間だよな?
その間、お前は宇髄に疑念を向けたことはなかっただろうし、その気になればお前を害する機会はいくらでもあったと思うんだが、何故いまなんだ?」

「…それは…わからねえけど…」
「その車の運転手は何か宇髄とつながりのある人物だったのか?」
「…知らねえ…」

「つまり…お前がそう感じたから…というのが理由と思っていいか?」
「………」

宇髄は苛立ち、杏寿郎は眉を顰めるが無言。
村田は、はぁ~と呆れたため息をつきながら、一応義勇が余計なことを言い出さないように見張っている。

そんな中で錆兎は飽くまで淡々と穏やかに
「なあ、不死川…」
と話しかける。

「俺は以前お前に、100%ということはめったにないと言う話をしたんだが、覚えているか?」
「…ああ、覚えてる…」
突然の言葉に不死川はやや不思議そうな顔をした。
そこで錆兎はやはり静かな声音で続ける。

「客観的に事態を分析するとな?
お前の妹が車に轢かれかけたのは別に誰かが企んでいたというわけではなく、偶然だと思う。
もちろん100%絶対そうだとは言えないが、かなり高い確率だ。
根拠は…もしお前に対する復讐としてお前の妹を狙ったのだとしたら、その運転手は急ブレーキをかけたりせずに、お前の妹をひいているだろう?
お前に恨みを持つものが居るということが100%ないとは言わないが、少なくとも今回のことは宇髄のせいでも他の誰のせいでもなく、意図的に起こされたものではない、単なる事故だと思うぞ?」

「……っ!
急ブレーキをかけたってことは、寿美をひく気じゃなかったのか…。
そっか…そうだよなァ…。
さすが鱗滝だな…」
と、初めてそれに気づいたとばかりにそう言う不死川に、一同がっくり肩を落とす。

そこでいったん双方落ち着いたかと思われたが、宇髄が思わず舌打ちを共に零した
──…っ!…ざけんなよ…クソがっ!
という小さな呟きを不死川が拾って、
──なんだとォっ!!
といつもの調子でこぶしを振り上げたところで、ちょうど握られていたナイフを振りかざす形になったのを、通行人の女性が見とがめて、
──きゃああぁあ~~!!!!!
と悲鳴を上げた。

なんだ、なんだ?!!と集まってくるやじうま達。
警察を呼べっ!と小声が飛び交い、それとは別に動画を撮り始める者も何名か。

やじうまの言葉で自分が警察を呼ばれるような行動をしている…と気づいた不死川は動揺して、
「どけ、どけえぇぇ~~!!!」
と集まる人だかりにナイフを振りかざして逃げ出そうとする。

もう誰にも止められないすごい騒ぎになったところに警察が到着し、それでも逃げようとする不死川を取り押さえた。










2 件のコメント :

  1. 皆様、ご無事で良かった😊
    心身ともに健全な武芸の達人が揃ってるいるから当然の結果ですね😁
    昨日は心配し過ぎてしまいましたが安心しました。
    それにしても不死川は相変わらずですね😫

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    1. 義勇と村田さん以外は全員腕に覚えがありなので余裕ですねっ😁
      不死川はメンタル病んでいるので、正常な判断が出来ない状態です💦

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