宇髄自身、これで実弥に関してはきっちり心の整理が出来た気がした。
それもこれも、自身がおそらく多大なストレスを感じるであろうと予想していて、それでも宇髄に対する誠意を示そうと、先に膨大な糖分を摂ることでメンタルを保ってまでも話をしてくれた錆兎のおかげである。
だから今後も錆兎達とは交流を続けていくだろうし、彼が困った時には実弥に対してしていた以上の助けの手を差し伸べるつもりでいる。
ということで、その後は普通にイノシシ獲りや畑仕事の話とか、意外にDIYが得意な宇髄の話とかで盛り上がり、2時間ほどで個室を出た時、隣のドアが開いたかと思ったら、なんと見知った顔が3人。
「…え??」
と思い切り驚いた顔をしているところを見ると、錆兎も知らなかったらしい。
そんな風に固まっている錆兎に、義勇が駆け寄って来て、
「…一緒に帰ろう!」
と、なんだか宇髄が見たこともない可愛らしい顔で笑って錆兎を見上げた。
「…あ、ああ?」
とそれに頷きながら、錆兎が困惑した視線を村田と並んで立つ杏寿郎に向けると、彼は
「義勇が錆兎が出かけるなら一緒に行きたいと言い出してな。
しかし宇髄の話は込み入ったものなのだろうから、義勇が居ると話しにくいかもしれないしな。
それなら俺達が付き合うから隣の部屋で待とうという話になったんだ」
と当たり前に笑顔で説明する。
そしてそれからその笑顔を宇髄に向けて
「そうだっ!どうせならガツン!としたものをみんなで食わないかっ?!
ここのスイーツは確かに美味いんだが、どうも腹が満たされた気がしない!」
と言ったあと、ちらりと錆兎に視線を向けて、
(…どうせ彼は食事らしい食事を摂っていないのだろう?
ここに来るのはたいてい飲み込みがたいものを飲み込むために、糖分を摂取しに来る時だから…)
と、それは杏寿郎らしくもなく小声で言った。
ああ、なるほど。
いつもは錆兎が杏寿郎を気遣う場面ばかり目にしているが、当たり前だが逆も然りなのか…と宇髄は納得した。
さらに言うなら…その錆兎に対する気遣いを共にすることを秘かに求められるくらいには、自分はどうやら杏寿郎にも信頼をしてもらえるようになったらしい。
「あ~、そうだな。ガツン!と肉行きたいなぁ」
とそれにいつもよりは若干大きな声で言うと、義勇に意識が向いていて二人のひそやかなやり取りに気づいていない錆兎は
「宇髄…普通に料理も食ってたのに、杏寿郎並みの胃袋だな」
と驚いたように目を丸くした。
それに同じく何も気づいていない義勇も
「杏寿郎すごいな。俺はお腹いっぱいだ」
と空気を無視どころか突き破るような発言をしたかと思ったが、その後、
「でも…錆兎のために肉を焼きたい。
いつも家では錆兎が美味しいご飯を作ってくれるから」
と甘えるように錆兎の腕を取って、さあ、行こう!とばかりに軽く引っ張る。
そこで最後の一押しに、村田が
「俺も杏寿郎に付き合わされてさつまいもフェアのスイーツ全品を義勇とシェアで、義勇が食べられない分を全部食べさせられたから、とにかくもう口ン中が甘すぎて…しょっぱいもの食べたい…」
と眉尻を下げて言ったところで、焼肉行きは決定になった。
こうして男5人で焼肉に行くことにして会計を済ませて外に出た瞬間、いきなりゾクリと異様な雰囲気を感じて錆兎と宇髄が振り返った。
錆兎、義勇さん どうか御無事で!
返信削除実は今回のターゲットはその二人ではなく…😨
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