そこからは二人して幼少期から学生、そして社会人になってからの錆兎の話を聞かせてくれる。
初恋泥棒と言われた幼少期。
なんでも幼稚園で一番よく出来たし、とにかくモテていたなっ」
と言う杏寿郎。
「し…4月生まれなんだ?何日?」
「うむ、8日だなっ!灌仏会だっ!めでたい奴だっ」
とそこでさりげなく錆兎の誕生日情報ゲットでほくほくの義勇。
「杏寿郎も5月だから早いよね。
やっぱり人生のスタートダッシュが早いとお前らみたいになんの?」
とため息交じりに言う村田。
「いや?その理屈だと4月2日生まれの人間が最強になるだろう?」
「そうだけどさ。冨岡は?なんか早生まれっぽいけど…」
「俺は…2月8日」
「やっぱりっ!」
「そういう村田は?」
「俺?俺は10月9日。ちょうど学年の真ん中らへん。
もうさ、なにもかもが笑えるほど良くも悪くもなくまん真ん中の人生よ?」
と、それは苦笑交じりに言った。
小学生時代は杏寿郎が児童会長で錆兎が副会長だったこと、中高は逆に錆兎が生徒会長で杏寿郎が副会長、そして中学から一緒になった村田は毎回二人につきあわされるように会計をやっていたこと。
バレンタインのお返しにと錆兎が焼いたクッキーを杏寿郎が食べてしまって、そこから材料を買いに行かされ、二人でそれぞれのお返し分を徹夜で焼いたことなど、楽しそうな思い出が満載だ。
「なんだか学生時代ってすごく楽しいものみたいだな」
と言ったのは別に他意はない。
率直な感想だったわけなのだが、そこでいつものように大声でしゃべり大声で笑っていた杏寿郎がピタリと静かになって、痛まし気な視線を義勇に向けて来た。
それに空気を読んだ村田が慌てたように、
「と、冨岡はさ、何かこれだけは楽しかったとか言うのはなんだった?」
と聞いてくる。
それに一瞬、ない!と言いかけて、あ、でも…と義勇は思い出した。
「部活…将棋部だったから…」
と言うと、村田はホッとしたように
「あ~、そうなんだ。
部活は楽しいよね。
俺はずっとマネージャーやってたから大変だったけど、主に錆兎と杏寿郎関係で。
でも楽しいことも多かったな」
と返して来るが、それに
「部活の間は不死川に気を付けなくて良かったから…」
とつい零したら、杏寿郎がピキっと固まったことで、義勇もようやく失言だったことに気づいた。
「あ、あ、でもっ、なんで錆兎と杏寿郎のことでマネージャーが大変になるの?
2人とも別に特に我儘なこと言ったりとかしなさそうだけどっ!!」
と、そこで強引に話を戻すと、杏寿郎が口を開く前に!とばかりに村田が慌ててその会話を引き継いでいく。
「あ、ああ、それね。
2人して剣道部の部長、副部長でさ、全国大会優勝とかもしてるから、おっかけとかすごいのよ。
差し入れとかもさ、密封されている市販品ならまだしも、手作りとかは安全上だめって顧問の先生に言われてて、でも本人忙しいから断るの俺でさぁ…。
もう恨まれる恨まれる。
こっちがそんな大変な思いして必死にガードしてんのに、杏寿郎は目を離すと勝手に貰って口に放り込もうとするしさ。
大会前後と二人それぞれの誕生日とバレンタインはホント地獄だったわ」
俺はぜんっぜんもらえないのにさ、と、ため息をついてみせる村田の様子に、申し訳ないが噴き出してしまう義勇。
杏寿郎も昔のそんなエピソードを出されて
「すまなかったなっ!でも食べ物を粗末にするのはどうかと思ったんだっ!」
と全然反省のない言葉を吐いて、
「お前はぁ~!今でも本当は悪いと思ってないだろォ!」
と、村田に呆れ半分だが怒られて頭を掻く。
そんな錆兎をして杏寿郎の扱いのプロと言わしめる村田の活躍で、なんとか杏寿郎も落ち着いた頃、不死川の方も落ち着いたらしく、錆兎が部屋に戻ってきた。
うわ~、義勇さん悲惨ですね……実弥が張り付いていびり倒していたせいで学生時代灰色どころの話じゃないじゃないですか。よく不登校になりませんでしたね。……やっぱり実弥は処罰受けるべきでは?
返信削除まあ学校という所は基本的に問題を起こして欲しくないという姿勢というのもありますし、大きな怪我をした上でそれが加害者のせいであるという証拠がないと、加害者の処罰と言う方向になかなか動いてくれないのが現実なんですよね…😑
削除まあ…被害者保護という方向に重点を置くと、特別な方々な場合は色々裏技はあるんですが…😅💦💦