捕獲作戦_完了_見越している失敗

とりあえず義勇にどう話すかは一度考えてみると言う不死川を部屋に残して、宇髄は錆兎と共に不死川の部屋を出た。

「…あれ…心入れ替えて気長にやる気になったと思うか?」
と、いったん錆兎の部屋を目指して廊下を歩きながら聞く宇髄に、錆兎は
「いや?たぶん一度やらかすだろうな」
と小さく首を横に振る。

そして
「へ?それでも放置かよ?」
と、驚く宇髄に、
「実際に痛い目に遭わないと理解できない人種はいるからな。
リカバリをするならこちらが用心している期間に早く失敗してもらった方が対処しやすい」
淡々と言った。

「………」
「…なんだ?」
無言で考え込む宇髄に錆兎が聞く。

「いや…最終的に実弥も取り返しのつかないことにならないような形でなんとかできんのか?」

何度も呆れて何度も見捨てるぞと思ったものの、宇髄にとって不死川は小学生時代からもう17,8年来の親友と言えるほどの親しい友人なのである。
完全に見限ったりできるわけがないのだ。

そんな宇髄の気持ちも当然理解している錆兎は柔らかな笑みを浮かべて
「大丈夫。最終的には不死川がやらかした場合、その影響は本人だけにとどまるわけではないことを説明すれば、自重するようになる。
だが、今はあまりに多くの情報を伝えられて、本人も混乱しているからな。
言っても頭に入らない。
落ち着いたら理解できることでも考えられなくなっていると思う。
心配するな。
それより宇髄、お前は少し休んだ方がいい。
何かあるとしたら食後だと思うから、夕食まで1時間ちょっとしかないが、少しでも仮眠を取ったらどうだ?」
などと労わりの言葉をかけて来た。

ああ、確かに自分も疲れているのかもしれない。
幹事として諸々の手配を考えつつ、それに不死川の都合を組み込んで、その後も計画通りに行かない現状に色々修正を加えながら行動し続けてきたのだ。
疲れて当然だ。

自分でも色々頭が回らなくなってきて混乱している気もするので、錆兎の
「ちょうど俺達の部屋は今誰も居なくて静かだからそっちで寝ているといい。
俺は村田の部屋にいる義勇と杏寿郎に合流するから、気にするな」
と言う言葉に甘えさせてもらうことにして、錆兎の部屋の鍵を預かって、途中で分かれて部屋に行くと、倒れこむように座布団を枕に爆睡した。


目が覚めたのは内線の鳴る音だった。
そろそろ夕食の時間なので、錆兎が連絡してくれたのである。

そのあたり、自室なのだから起こしに来ても良いのに、眠っているところに来られると宇髄も気を使うと思ったのだろう。
相変わらず気遣いが細やかだ。

『そろそろ夕食だぞ。よく眠れたか?』

「あ~おかげさんで。
俺はとりあえず実弥を拾って飯行くわ。
鍵はフロントに預けておくから受け取ってくれ。
今回は色々ありがとな」

『いや、お前には色々と迷惑をかけたしな』
と、そんなやりとりのあと、
『それと…ちょっと提案がある』
と、錆兎から一つの提案がなされた。

それは宇髄にとっては驚くべき提案で…しかし今ではもう宇髄もこの中身は脳筋だがとんでもない策略家でもある同僚の能力は思い知っていたので、その提案を受け入れることにした。

こうして宇髄は、とりあえず不死川の方針が決まるまでは義勇には近づけさせられないと、今まで通り当座は自分が引き受ける形を取ることにして、錆兎達の部屋を出た。








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