捕獲作戦_完了_脳筋の根気

もう何がなんだか宇髄にもわからない。

義勇と恋人同士になったはずの錆兎が、不死川が義勇とつきあえるわずかな可能性というやつを教えてやると相変わらず淡々とした口調で言うのである。

はっきり言ってもう不死川に一発殴らせて、それで警察に被害届&解雇のコンボを狙ったほうが、こいつ的に楽じゃないのか?
などと、不死川の友人としてはありえない事を考えつつ、好奇心が勝って宇髄もまた不死川と一緒に錆兎の話に耳を傾けることにした。

「まず最初に…不死川がさきほど横からかっさらったと発言したわけなのだが…これは正しくもあり間違いでもある。
そもそもは俺がお前と義勇の間の諸々に介入したのは、何度も言うが杏寿郎の暴走を抑えるためだ。
だから最初の時点ではかっさらう気はさらさらなかった。
…が、一緒に逃げているうちに、義勇の人柄に惹かれていって、ずっと共に居て欲しいと申し出て今の状況になっている。
その時点で…宇髄はお前が義勇を好きなことは俺に言っていないのだから仕方ないと言っていたし、それはそれで事実なんだが、一方で俺はお前の義勇に対する行動が好意の裏返しなんじゃないかと思ってはいた。
なので義勇にもその時点で俺はそうだと思うが、それでも俺を選んでくれるか?という聞き方はしている。
ということでお前達からは言われてはいないが、察しては居た。
そこは悪かった。
ただ俺には俺の事情があって、義勇を諦めることは出来ない。
お前には諦めてくれ…と言いたいところだが、義勇が本心から俺よりお前の方が良いという日が来たら、それを止める権利は俺にはない。
俺は義勇に一緒に居たいと思ってもらえるように全力で臨むつもりだが、義勇が幸せで居ることが最優先事項ではあるので、義勇が俺以上に誰かを好きになったから離れたいと言うのなら、受け入れる気ではいるんだ。
だがお前がいくら暴れようとキレようと、義勇が嫌がるなら俺はお前を義勇に近づかせない。
だからお前が義勇の特別になりたいと望むなら、まず、お前を一切信用していない義勇にお前を信用させるところから始めなければならない。
それはおそらく非常に長い道のりだ。
最低限、小学生のいつからかは知らないが、6年生からだとしてもお前は今まで12,3年かけて義勇に不信感を抱かせることをし続けたのだから、その信頼を取り戻そうと思うなら、それ以上の年月が必要だと思った方がいい。
よく加害者はやったことをすぐ忘れても、やられた被害者側は一生忘れないというからな?」

義勇を手放したくないと思っている錆兎にとっては不死川をそのまま放置すれば勝手にさらに嫌われてくれるのだから良いはずだが、それでも彼は義勇に嫌な思いをさせないということを優先しているのだろう。

すげえな、懐の深さが違うわ…と、宇髄はもう本当に何度も何度も思ったことをまた思ったわけなのだが、そんなありがたい忠告に対しても不死川は

「ちょい待てよ。
そんなに待ってたら俺らジジイになっちまうだろうが…」
と不満げに口を尖らせる。

それに、
──お~ま~え~はあぁぁ~~!!だから負けてんだよっ!!
と、宇髄は不死川の後頭部をどつきたくなった。

というか、とにかくプラスの気持ちを持たれている状態でも義勇の気持ちに寄り添い続ける錆兎を前に、やらかし続けてマイナスの気持ちを持たれている状態なのに義勇の気持ちより自分の願望を主張し続けている時点で、終わっているだろう。

友人である宇髄ですらその不死川の返答を聞いて見捨てたくなったのだが、錆兎はまだ諦めずに続けるらしい。

「人生100年時代らしいからな。
異性ならそれでも子を産み育てる年齢と言うのを考えねばならないが、幸いにして同性だ。
13年かかったとしてまだ38歳。死ぬまで半分以上残っているぞ。
本当に相手の事が好きで相手が本当に自分の事を想ってくれる生活のための努力と思えば長すぎではないだろう?」
と、苦笑しつつ言った。

「…2日で手に入れやがった人間に言われたくねえ」
と、それにも悪態をつく不死川だが、錆兎はそこは澄まして
「俺は義勇が嫌がるようなことを十数年も続けていないからな」
と、やや手厳しいことを言う。

それを言われれば不死川はもう返す言葉はない。

そうして黙った不死川に、錆兎は
「義勇への想いが実るにしろ実らないにしろ、努力して身に着けた対人能力はお前の中に残るし、それはこれからお前が生きていく上で色々を容易にしてくれるから、無駄にはならないぞ」
と、最後にそう言って、話を終わらせた。










2 件のコメント :

  1. 最早宇髄さんが気の毒すぎて居たたまれなくなってきます。見捨てて良くないですかもう。完全に縁を切ると義勇が気にするって言うのなら、ただの同僚レベルに交流を控える程度はしても許されるような気がします。本誌からそうですけど実弥って独善的だし考えが浅いですよね。決して悪人ではないんでしょうけど善なる部分を見せるのは腹を見せた格上相手だけというか。同僚や弟、母親といった身近な相手にも見下しが透けて見えるんですよ。俺が考えた道が最善だからお前は黙って従え的な。相手の気持ちなんかお構いなしで「良かれと思って」「善意で」それを押しつけるから、その行為の醜さに気付いていないんですよ。しかもそこには暴言暴力を伴うという……ぶっちゃけモラハラDV野郎ですよね。

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    1. あ~確かに実弥は他人のいうこと聞かないところありますよね。
      目下だと特に😅
      お館様にお伺いを立てることもなくいきなり禰豆子の箱に刀突き刺したりとか💦💦
      玄弥の一件も言うこと聞かないなら暴力じゃなくて、きちんと話し合えばまた違う結果があったかもしれませんしね😔

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