捕獲作戦_進行_何故か平和な朝の時間

錆兎と一緒に朝食の並んだ広間に入った時、義勇達を見て駆け寄ってきたのは不死川ではなく、杏寿郎ともう一人の同期だった。

「おはようっ!錆兎、冨岡っ!今日もいい天気だなっ!!」
と、ぱあぁ~っと太陽のような笑みを浮かべて手を振る杏寿郎。

その隣の同期はどこかで見たことが…と思いつつも思い出せないでいると、
「こっちは村田だっ!俺達が剣道部だった頃のマネージャーでなっ!
非常に実直で気持ちのいい男だっ!!」
と、聞くまでもなく杏寿郎がドン!とその背を叩きながら紹介してくれる。

「あ…ああ、確か部屋割りのくじの…」
と、そこで義勇も思い出した。
確か平等を期するためと、錆兎が共にくじを引く人間として指名した相手だ。

「そうそう。真面目で実直で経理畑に入るために生まれてきたような男だからなっ。
信用第一のような作業には最適なんだ」
と錆兎がそう付け加えると、
「まあ…お前らに関わるとなんでかロクなことにならないんだけど…」
と、村田は少し困ったように笑う。

「そう言ってくれるなっ!今日は昼に礼に美味いそばをおごるからっ!
なんと平日の昼は天ぷらが食べ放題なんだっ!!」
と、どでかい声で言う杏寿郎。

芋のてんぷらもあるぞっ!!と、どこか嬉しそうな杏寿郎の様子に、錆兎は
(杏寿郎はさつま芋全般が好物なんだ)
と、苦笑交じりに教えてくれた。

こんなやりとりがまるで友達同士と言った感じでなんだか嬉しい。

しかも少し離れた所から不死川の視線を感じるが、何故か声はかけてこない。
錆兎と杏寿郎、そして村田に囲まれているせいなんだろうか?
と、不思議に思いながらも、義勇は促されるまま席について、3人の同期に囲まれながら美味しい旅館の朝食を頂いた。


こうして朝食を食い終わったら今度こそ走り寄ってくるかと思ったのだが、不死川はこちらに時折り鋭い視線を送る割に、一切声をかけてこないままで、義勇は錆兎に伴われて自室へ戻った。

そして戻るなり錆兎が
「申し訳ないが大急ぎで着替えてくれっ!
あとでゆっくり休めるから」
と、義勇に言う。

もちろん義勇に異論があろうはずもない。
錆兎に何か予定があって、それに義勇も誘ってくれるなら喜んでついて行く。
なにしろ一人でいたらいつ不死川に殴りこんでこられるかわかったものではないのだから。
なので浴衣から私服に着替えて、大急ぎで旅館を出て錆兎の車へ。

しかし急いで出てきたわりに、錆兎は出発する気配もなく、どこかにメールを打っている。
義勇がそれに小首をかしげると、錆兎は
「ああ、杏寿郎と村田に連絡していた。
今日これから杏寿郎と村田も一緒だから」
と、──車で待っている…と杏寿郎に短いメッセを送ったスマホを義勇に見せてくれた。

なるほど!今日は友人二人も一緒なのか。
そう納得して、義勇も大人しく二人が出てくるのを車内で待った。

それから数分後、ゆったりと歩いてくる村田と、さらにそれからしばらくしてダッシュで来る杏寿郎。

「さあっ!急いで出発するぞっ!!」
と一番あとから来たのに急かすのはまあご愛敬だな…と、義勇は思ったわけなのだが、のちに、その来る順番と急かしたことに意味があったのを知って、感心するとともに二人に感謝することになる。

ともあれ、杏寿郎が村田と並んで後部座席に飛び込むと、錆兎は即アクセルを踏み込んだ。

昨日のゆったりとしたのと違ってやや急いだ感じの運転を不思議に思っている義勇に
「安全には最大限気を使ってはいるが今日は少しばかり急ぐから運転がやや荒く感じたら悪い」
と、一言。

そうして4人を乗せた青い小型車は一路街へと走って行ったのだった。










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