止まった足音に振り向いた錆兎の視界に入ってきたのは、青ざめて硬直している義勇と引き留めるようにその肩に手をかけている不死川実弥の姿である。
それに一瞬腹の底から不快感が沸き上がるのを感じて、しかしすぐ冷静になった。
そう、理由はないはずなのに、何故かイライラした。
もちろんそれを表に出すような愚は犯す人間ではないのだが…
とりあえず不死川を排除するより先に、義勇に自分が味方であると認識させる方が先だ。
なので、錆兎は好感度が高いと言われる自分の雰囲気を前面に出して、穏やかににこやかに、義勇の肩に手を置いて、怯えている義勇をかばうように自分が二人の間に入って様子を窺う。
幸いにして後ろの義勇はホッとしたようにわずかばかり緊張を解いたようなので、これは進めて良しとみて、錆兎は今度は不死川の方へと視線を向けた。
義勇が嫌がっているだろう、近づくな…と言いたいところではあるのだが、おそらくそれでは不死川を激昂させて面倒なことになるだろうし、そうすればおそらくあまり争いごとが好きではない義勇にストレスを与える。
杏寿郎と共に脳筋コンビと言われる錆兎だが、実はそんじょそこらの人間よりも慎重に色々考えて物事を進める派だ。
最終的に行動に移すまでの経過を一切見せないだけである。
なので今回も全く他意はなく、何も気づいていないと言う風を装って
「不死川…だったか。
申し訳ないが急ぎじゃなければ後にしてくれ。
先に荷物を運んで部屋で落ち着きたい。
夕食の時とかではダメな話か?」
と言えば、不死川も自分の行動を邪魔されたという意識は持たなかったらしい。
錆兎に対してどう答えようかと悩んだ後、口を開きかけたが、そこでようやく不死川の対応係である杏寿郎が
「不死川っ!君はこっちだっ!
さっさと行くぞっ!
以前一度家族で来たことがあるんだが、ここのお着き菓子はすごく美味いんだっ!!」
と介入してきて、有無を言わさず不死川を引きずって行った。
そこで再度義勇を振り返り、部屋へと促すと、義勇は素直にまるでカルガモの子どものようにテチテチと錆兎の後ろをついてきた。
うん、なんだか可愛いな。
と、その様子にそんなことを思った時点で、杏寿郎のためだった今回の行動に、錆兎の中で別の意味が生まれかけていたが、この時点では錆兎自身もそれにきづくことはなかった。
次の公開が楽しみで仕方ないです!
返信削除朝からこちらのお話を読むのを楽しみに頑張ってます🥰御身体の具合はいかがですか?えっくすにて知り、びっくりしました。
お大事なさって下さいね😥
楽しく読んで下さる方がいると思うと、とても励みになります。
削除ありがとうございます😊